2008年01月30日
ダウ、テキサスにクロルアルカリ新設、シンテックとのVCM供給契約を更新
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:シンテック、ダウケミカル

 ダウは29日、本年にテキサス州フリーポートでクロルアルカリ設備の建設を開始すると発表した。2011年のスタートを目指す。

 同地の既存のプラントの多くは経済的な耐用年数に近づいており、今後3年間で順次停止する。

 同社会長兼CEOは、「塩素はダウの機能製品事業の重要な原料で、ポリウレタン、エポキシ、特殊化学品、特殊プラスチック、農業化学品の将来の成長の鍵を担っている」と述べた。

 同時にダウは、30年以上の需要家であるシンテックとのVCMの長期供給契約の更新を発表した。

 同会長はこれについて「この供給契約は新投資の操業を保証するもので、JVの形はとっていないものの、シンテックはクロルアルカリ事業での戦略的パートナーである」としており、同社が石油化学事業で進めているasset-light 戦略(JV設立または既存事業のJV化によるリスク軽減戦略)の延長であるとしている。

 ダウは2004年11月に、テキサス工場のEDCプラント1系列を2005年末までに停止し、VCMの生産も縮小すると発表した。

 今後の設備の維持更新費が多額となるのに加え、エネルギー・原料価格の高騰に伴い、採算が合わなくなったためと説明した。

 更に2006年8月には、カナダの電解、EDCプラント停止を発表している。27年間経過したプラントを今後長期間維持するためには多額の投資が必要で、現在の想定収益性ではこれを認められないのが理由。

 これらの動きから、ダウがクロルアルカリ事業を重視しなくなったとみられた。

 一方、シンテックはこれまで原料VCMを全量ダウに依存してきたが、現在ルイジアナ州で塩素45万トン、VCM75万トン、PVC60万トンの工場を建設中で、更に2007年5月には、テキサス州で電解工場(塩素50万トン)とVCM工場(825千トン)を建設する許可申請を同州環境庁に提出した。

 これにより、両社の関係が薄まりつつあるとの見方がなされていたが、今回の動きは関係を再度強化するもので、シンテックのテキサス計画は延期されるのではないかとみられている。

 ダウは昨年、中東と中国でのクロルアルカリの投資計画を発表している。
 
 中東ではダウはサウジアラムコとの間で、サウジのラスタヌラに世界最大級の石油化学コンプレックスを建設する覚書を締結したが、これにはワールドスケールの電解設備と、VCM、ポリウレタン、エポキシレジンなどが含まれている。

 中国では中国の国有石炭最大手・神華集団との間で、陜西省楡林市にワールドスケールのCoal-to-Chemicals コンプレックスを建設するための詳細FS実施の契約を締結した。

 計画では“clean coal”technologies を使用し、石炭からメタノール、メタノールからエチレンとプロピレンを生産するが、電解設備も建設し、苛性ソーダ、VCM、有機塩素等を生産する。

ニュースリリース参照
http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1201660386.tif