2008年02月14日
JPEとJPPの出荷調整、ピーク時の2割減まで回復
海外玉の手当てや三菱化学のオレフィン調達も軌道に
【カテゴリー】:経営(原料/樹脂/化成品)
【関連企業・団体】:日本ポリエチレン、日本ポリプロ

 三菱化学グループの日本ポリエチレン(JPE)と日本ポリプロ(JPP)の両社は三菱化学・鹿島事業所内の第2エチレンプラントの火災事故の影響でかねてから生産と出荷の調整を余儀なくされているが、ここにきて三菱化学による原料オレフィンの外部調達や両社自身による海外玉の確保が軌道に乗ってきたため国内の需要家に対する出荷量は品繰りが最も厳しい品目でもピーク時の2割減のところまで回復してきている模様。
 一時は、出荷を従来の半分ていどに減らさざるを得なくなる品種も出てくると見られていたが、実際にはそうした深刻な事態はなんとか回避でき、3月にはさらに改善が進む見通しも出てきている。
 
 今回のエチレンプラントの事故で生産調整を余儀なくされたJPEとJPPの樹脂プラントは、2基合計年産260,000トン能力のL-LDPE装置、同62,000トンのHP-LDPE装置、3基合計同346,000トンのPP装置の計6基合計年産668,000トンプラント。日本全体の設備能力に占める比率はポリエチレンの場合で13.6%、PPで10.9%となっている。
 これらの樹脂の中で最も市場への影響が大きいとして成り行きが特に警戒されていたのは、わが国全体の総設備能力の24%を占めるL-LDPEであった。しかも同社が手掛けているC4(ブテン1)をコモマー使用の品種の場合はわが国全体の同品種の設備能力に占める構成比が54%前後と高いため、操業停止が長引くと事業存続の危機に見舞われるユーザーが出てくることも懸念されていた。
 
 現に年初の同樹脂の出荷量は在庫を思い切って取り崩したにもかかわらずピーク時の60%程度まで縮小、需要家の間には先行き不安感が大きく膨らんでいた。しかしその後は三菱化学が外部から懸命にエチレンをかき集め、またJPE自らも韓国、台湾、米国、サウジアラビア等の国々の余剰玉を緊急に調達してきたため徐々に充足率が向上、1月下旬以降の削減率はピーク時の3割ていどまで回復したとされる。続く2月は2割ていどに縮小できる模様であり、そして3月には第2エチレンプラントの部分的な稼動再開が可能となる見通しも出てきたので、同樹脂の生産・出荷制限がさらに緩和される公算が濃厚となっている。
 
 一方、JPPのPPについても在庫の取り崩しやプロピレンならびにPPの外部調達によって最近の出荷量はL-LDPE同様にピーク時の8割どころまで回復してきている模様。縮小しているのは専ら他のPPメーカーへの切り替えが容易な汎用グレードであり、このため市場に混乱は現われていない。またHP-LDPEの場合は、シェアが5%にも満たないのと他社への切り替えが比較的容易なためやはり市場に混乱は生じていない。
 
 ただし、今回の事故によってJPEもJPPも収益を大きく圧迫されることになる。当面の最重要課題である供給責任の遂行に続いて、減産や緊急外部調達にかかわって発生する膨大なコスト増や値上げの実施時期の遅延等による採算の悪化という難問をどうクリアしていくかも注目される。