2008年05月26日
三井化学、フェノール製品大幅減産へ、輸出採算が悪化
【カテゴリー】:市況
【関連企業・団体】:三井化学

 アジア最大のフェノール・チェーン企業である三井化学は、6月3日からフェノール(PH)とビスフェノール-A(BPA)の大幅減産に踏み切ることを決めた。国内プラントの稼働率を現在の100%から80%に引き下げる。これに伴い、連産品のアセトン(AC)も同様幅で減産となる。

 わが国の化学企業がPH製品で20%もの減産に踏み切るのは異例で、減産期間は6月末までとしている。ただし、この間の輸出価格の是正が進まない場合は7月以降も同じ幅の減産を継続するとしている。
 
 同社が今回、こうした大幅減産を決めたのは、中国をはじめとしたアジア地域の需要の伸びが当初予想を大きく下回り、原燃料価格の上昇分が輸出価格に転嫁できず、輸出採算の確保が極めて困難となってきたため。
 
 同社が年初に予想した今年のPH需要の伸び率は、世界全体で3.5%、アジアでは8%だった。しかし住宅着工件数の落ち込みや、中国の金融引締の影響などから、実際の伸び率はこれを大きく下回り、現在では世界全体の伸び率を2%、アジアは4%に下方修正している。
 
 BPAも、当初は世界全体で6%、アジアで8%の伸びを予想していたが、それぞれ4%、6%に下方修正する。これには、最大消費先のポリカーボネート樹脂向けの需要が、世界全体で7%増、アジアで10%増とした年初の予想に対して、実際には30%程度落ち込む見通しとなったためという。
 
 一方、アジアの市況は、ベンゼンやプロピレンの国際価格が軒並み高騰を続ける中、低水準に張り付いたままとなっている。同社によると、現在の中国向けのトン当たりのCFR価格はPH1,550ドル、AC1,000ドル、BPA1,850ドルで、いずれも原料との適正スプレッドを大幅に下回っている。このため同社は、6月から各製品の輸出価格を引き上げる。PHは200ドル上げて1,750ドル、ACも200ドル上乗せの1,200ドル、BPAは150ドル上げて2,000ドルとすることにしている。