2008年06月17日
三菱化学、PTAの輸出価格体系を改善へ
〓フロアー方式〓で適正スプレッドの確保目指す
【カテゴリー】:経営(原料/樹脂/化成品、市況)
【関連企業・団体】:三菱化学

 三菱化学はPTA事業の抜本的な建て直し策の一つとして、アジア市場を対象とした販売価格体系の改善に乗り出すことになった。
 
 具体的には東南アジア地域と西南アジア地域の需要家向けの価格体系を、原料PX(パラキシレン)の価格に一定のスプレッド額を加算した額を下限とする新たな販売価格体系に改め、中国市況が下落した場合でもこの下限価格を下回る価格では販売しないこととした。同社ではこれを“フロアー方式”と名づけ、先ずは同社の製品の消費の多くを占める東南アジアならびに西南アジア諸国の需要家を対象に受け入れの説得を開始した。

 次いで中国の需要家にも趣旨を説明して同意を得ていくことにしている。受け入れを拒否する需要家が出た場合は、減産をさらに強化していく考えだ。狙い通りいけば、アジア市場全体におけるPTAの取り引きの適正化が大きく促進されることになる。

 現在、世界各国のPTA企業の多くはアジア市場を主戦場と位置づけて主導権争いを展開している。中でもシェア争いが激しいのは中国市場で、PTAメーカーの中には採算ラインを割り込む価格でも敢えて取り引きを継続するところが多い。この余波を受け、東南アジア諸国や西南アジア諸国向けの価格も原燃料価格の高騰が続いているにもかかわらず中国の輸入CFR価格と横並びの低水準のまま推移している。

 このため三菱化学では、適正利益を確保してPTA事業を継続していくには先ずは同社が得意としている東南アジアと西南アジア市場向けのPTAの販売価格をPXの価格に適正なスプレッド額を加えたものに改めていくのが先決と判断、印度、インドネシア等の需要家各社の説得に踏み切ったもの。
 
 これらのアジア諸国では、ここにきてポリエステル繊維の需要が中国の伸びを上回るテンポで拡大しつつあるといわれる。今後も引き続き高い成長が見込まれており、また、ポリエステルフィルムやPETボトルの需要も着実なペースで伸びていくというのが多くの関係者に共通した見方となっている。

 PTAの供給能力はおおむね需要見合いの規模にとどまっており、このためこの数年新増設ラッシュが続いた中国市場と異なり現在の需給はほぼ均衡が取れている模様。また、中国のPTA市況の正常化を阻む勢力の一つと指摘される特殊な投機筋(融資商)がこれらの市場ではまだほとんど存在していない点も価格体系の抜本的な改善を目指す同社に取って追い風となりそうだ。

 BPをはじめ多くのPTA企業は、PTAの世界最大の消費国である中国における市場支配権の確保を今後も最重要テーマとして掲げていく構えだが、現在の三菱化学には中国市場偏重の施策を展開していく考えはなく、いま優先すべき最重要課題はこれまで中国市況準拠型できた東南アジアならびに西南アジアの市場の価格体系をこれらの地域独自のものに改める点に絞られると判断、中国向けに先駆けて改善に踏み切ることにしたもの。

 同社の説得活動が広まっていけば、他のPTA企業の間にも同じ方向を目指すところが相次いで出てくることになると見られる。