2008年07月30日
アジアでPTAの生産が大幅に縮小
各地で操業休止と稼働率調整が相次ぐ
【カテゴリー】:経営(原料/樹脂/化成品)
【関連企業・団体】:三井化学、三菱化学

 中国、韓国、台湾などアジア各地でPTA(高純度テレフタル酸)の生産量が今月末から8月末にかけて大幅に縮小することが確実の見通しとなってきた。
 
 PTA大手企業間で現有設備の一部もしくは全ての操業を一定期間休止する、あるいは稼働率を思い切って引き下げるなどの措置をするところが相次いで出始めたことによる。あるPTAメーカーの試算によると、向こう1ヵ月におけるプラントの緊急休止措置に伴う生産縮小規模は、若干のメカニカルトラブル分も含めてアジア全体の総設備能力のおよそ14.5%分となる見通し。稼働率調整による減産分も含めると19.9%となる見込みだ。大手が揃って大幅減産に踏み切るので、当面のアジア地域全体の需給バランスはこの数字から判断される以上に大きく改善されると予想される。
 
 アジア地域で7月中旬以降にプラントの一部あるいは全面的な操業休止に踏み切ったところは、寧波三菱化学(年産60万トン設備)を筆頭にすでに6社を数える。寧波三菱以外では中国のbp珠海、タイ・インドラマ、韓国・サムスン石化、同・三南石油化学、台湾・インビスタの各社が1系列の全てあるいは複数系列の一部の操業休止に踏み切っている模様。8月に入ると、台湾・Capco、同・FCFC、中国・逸盛石化の3社が同様の措置に踏み切る構え。

 これら9社合計の運休設備規模は年ベースで約500万トンに達する。経産省の調べによると、アジア地域における07年末時点のPTAの総設備能力は年3,460万トンとなっている。したがって、これら9社分だけでも当面の生産縮小率は14.5%になる。世界全体でも12%弱の縮小となる。

 これに加えて、稼働率の思い切った引き下げを実施する企業も増えている。日本では三井化学や三菱化学がいち早く国内で大幅減産を実施してきた。現在も、三井化学は岩国大竹工場(同75万トン能力)で40%の減産を実施中であり、加えてタイの子会社の設備(同60万トン)も稼働率を80%に下げている。三菱化学は松山の設備(同25万トン)の稼動を80%に抑えてきたが、さらに今月19日には中国・寧波の設備の全面的な緊急休止にも踏み切った。
 こうした動きに誘発されるように、最近は他の国のPTA企業の間でも大幅減産に乗り出すところが相次いでいる。中国・翔鷺石化、同・三しん化工、タイ・SMPC、印・IOC等が20〜30%の減産に入っている模様。
 
 このようにアジア地域の大手PTA企業が先を争うように大幅減産に大きく歩を踏み出しはじめたのは、最大の消費国である中国の需要がポリエステル繊維の対米輸出の不振や国内の金融引き締め策の影響で縮小傾向を辿り始め、PTA各社が原燃料の高騰を反映した適正価格を確保していけなくなってきたため。

 PTAメーカーの中には、三菱化学のように7月の提示価格について中国の需要家の同意を得られなかったため7月の同国向けの船積みをゼロにしたところも現われている。同社では減産を強化することで需給の均衡を図り、事態を好転させたいとしている。アジア各国のPTA大手の足並みが揃ってきただけに、遠からず打開の道が開けると見る関係者が多い。