2008年08月11日
ANの減産が世界各地に広がる
米国企業は軒並み30〜40%減
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品(経営)
【関連企業・団体】:なし

 AN(アクリロニトリル)の需要と市況の低迷に対応してのAN企業の減産が世界各地で活発化してきた。

 米国、日本、台湾、韓国の主要AN企業が7月以降軒並み減産に踏み切っており、その中では米国企業の減産率の高さが特に目立つ。イネオスやソルーシアなどの現在の減産率は30〜40%に達していると伝えられる。アジア地域では中国をはじめとしたAN消費国の多くがかねてから総必要量の3割前後を米国から輸入してきただけに、ここにきての米国勢の大幅減産はアジア地域全域の需給バランスに少なからざる影響を及ぼすことになると見られる。
 日本では、アジア市場のトップシェアホルダーである旭化成ケミカルズが15%の減産を実施しているのに加え、ダイヤニトリックスも大幅減産に入っている模様。また韓国では東西石化と泰光産業が、また台湾ではCPDCがそれぞれ秋の定修・運休を控えているにもかかわらず小幅ながらも減産に踏み切っている。
 
 いずれも、原料プロピレンの高騰が続く中で製品価格を思うように上げられないでいるため輸出の収支バランスが完全な赤字になっていることに対処して生産の縮小に乗り出したもの。これだけ多くの企業が一斉に生産量を絞る行動に出たのはANの世界では文字通り異例のこと。
 最近のANのアジアのCFR価格の平均は、繊維向けがトン当たり2,070ドル、ABS樹脂など繊維以外の用途向けが同2,300ドルといったところ。これまでAN各社は、高騰を続ける原燃料価格をできるだけ製品価格に転嫁したいと考え懸命に需要家各社を説得してきたが、消費量が最も多いアクリル繊維の需要が縮小しているのが響いてあまり成果が上がっていない。
 しかし、ここにきての各国の相次ぐ減産によって当面のアジアの需給バランスがあるていど回復するのは間違いないとの見方が関係筋に広がっている。