2008年08月18日
三菱化学、太陽電池に「フラーレン」、本格進出へ
LED使用の植物工場で、印刷可能
【カテゴリー】:経営(新製品/新技術)
【関連企業・団体】:三菱化学

 三菱化学は発光ダイオード(LED)と太陽電池、蓄電池を使った照明システムで野菜などを効率的に栽培する「植物工場」分野に進出することになったが、将来、太陽電池をフラーレンの有機薄膜、照明を有機ELに5-10年で切り替える方針である。

 フラーレン(発電効率最大15%)は、ナノカーボンと呼ばれる炭素原子で構成され、有機EL(エレクトロルミネッセンス)は半導体化合物(窒化ガリウムなど)で構成される。同社はこれらをいずれも研究(一部実用化)段階でとらえている。

 フラーレンは石炭を原料に作られるが、シリコンの短結晶・多結晶のアモルファス系に比べコストが安く、現在の多結晶シリコン製に比べ4分の1程度と計算されている。太陽電池の製造コストは今のところ1キロワット当たり40円程度、市販電力は同20円程度。同社ではフラーレンを使った場合、市販電力に近いレベルが想定できるとしている。

 しかも太陽電池をパネルにする際、ガラス基板のような固体ではなく、フィルムなどの印刷物として加工できるため、柔軟性があり、大きさも自由といった特徴がある。大要電池は二酸化炭素(CO2)を発生しないため環境保護にも役立つ。

 有機ELは薄型テレビ、携帯電話のデスプレイなど使用されているが、寿命(約3万時間)、高価格問題などが解消されれば,自発光でバックライトが要らないため、LEDに代わって需要が拡大すると期待されている。

 三菱化学は植物工場の分野進出するにあたって、野菜栽培のベンチャーである京都市のフェアリーエンジェルに2億5,000万円出資(約16%)した。同社は福井県美浜市に新工場を建設中で、今年秋に完成する。

 新工場は床面積約2,000平方メートル内に毎時20キロワットの発電能力を持つ太陽電池(外部から購入)と最大2,000個のLED照明を 設置する。向こう1,2年の間に野菜などの最適な育成条件を共同で探る。LEDはフェアリーエンジェル系のCCS社から供給を受ける。

 三菱化学では野菜栽培に向く緑色(波長470-670ナノメートル)や赤、白色などの効果を見極める。イチゴなど果実を育てるには赤色が適しているといわれる。

 野菜などの植物栽培には蛍光灯、冷陰極間などの照明やガラスハウスが使われている。LEDは蛍光灯の10倍(約6万時間)の寿命があり、液晶価格がこのところ大幅に下落していることもあり、太陽光を有効に活用することによって、照明コストを30%程度削減できる見通しだ。植物工場は水と若干の肥料で場所を選ばず、都会でも栽培できるメリットがある。

 多段式育成や、無菌クリーンルームでの無農薬栽培,栄養保持が可能。電気コスト、CO2排出削減に大きく貢献できる条件を備えている。わが国ではすでに40か所を超える「工場」が存在しているが、今後は大都会のビルの屋上にも出現する可能性が出てきた。