2008年09月03日
丹羽・伊藤忠会長「中国は西部開発で成長持続」 五輪後の後退論を“一蹴”
【カテゴリー】:経営(海外)
【関連企業・団体】:伊藤忠商事

 中国の北京五輪後の経済後退はあるのか。丹羽宇一郎・伊藤忠商事会長が「月刊中国通信社」の中国ニュース10月号で「沿岸部は土地のバブルなどといわれ、コストも上がっているが、西の方に行けばまだまだ開発の余地はある。人材力も大きくなっている」と後退論を“一蹴”した。以下はその要旨。

 中国は国土が広いので、どこで何をすればいいかわからなくなる。例えば華北や華南など6つぐらいのブロックに分けて、エリアごとの特徴を把握すれば、ある程度ビジネスの戦略が立てやすいのではないか。

 沿岸部のコスト上昇に対し、西へ西へと少しずつ移動して行けば、中国の世界の工場という位置づけは段々と広がる。インフラも整備して西部で作った製品を海外に持って行くことは可能だ。

 北京五輪後の中国経済だが、これまで抑えられてきた五輪関係以外の工事がラッシュして経済が活発になるだろう。後退論についてだが北京周辺の経済のインパクトは、中国全体からすればたかが知れている。

 経済発展の視点からみるとこれからは東北3省も注目される。2010年の上海万博後、瀋陽(遼寧省)を中心とする発展が見込まれる。中国の発展は沿岸中心の南から北にどんどん上がっている。胡錦濤国家主席が打ち出した東北振興計画が影響している。

 中国での企業経営は難しくない。儒教精神など共通の部分もあり比較的なじみやすいのではないか。ビジネスを行う上では、市場主義というか資本主義を習熟していない部分があるので、日本人としては戸惑う部分があるのではないか。

 私の経験から言うと中国人は本当に信頼できるようになると、日本人以上に信頼できる。あえて言えば人治主義みたいなものが残っていて、人と人とのコネクションが大事であること、また、これまでの社会主義体制ではどれだけつくるかが評価されてきたことがある。
資本主義社会ではどれだけ売って利益を上げるかが重視される。そこにギャップがある。人治主義の弊害は中国に限らず必ずあるもので、中国ではその比率が高い。中国はもっと透明度を高くしなければいけない。

 企業の透明度をあげ、コンプライアンスを進めることが大切だ。情報管理をして、なぜこういうことをするのか、あるいはしないのかということを、株主や従業員にきちっと説明すべきだ。そういう部分が不足しているので、社員を教育することが大事である。

 また、環境問題で石炭のCO2抑制ばかりでなく、並行して風力や太陽光発電などの技術開発を進める必要がある。そして黄砂や光スモッグ、酸性雨問題を解決しなければならない。これは韓国、日本を含む3カ国共通の問題でもある。