2008年10月07日
タカラバイオ、国立がんセンターで初の体外遺伝子治療治験開始
【カテゴリー】:経営(新製品/新技術)
【関連企業・団体】:タカラバイオ

 タカラバイオ(加藤郁之進社長)は7日、白血病などの造血器悪性腫瘍を対象としたHSV-TK(体外)遺伝子治療を、国立がんセンターとの契約により同センター中央病院で実施すると発表した。国内で体外遺伝子治療の治験が開始されるのはこれが初めて。
 
 近年、同種造血幹細胞移植後の再発白血病患者に対して、ドナーリンパ球輸注(DLI)療法が行われるようになったが、副作用として生じる移植片対宿主病(GVHD)が重大な問題だった。
 
 今回治験するHSV-TK遺伝子治療は、レトロウイルスベクターを用いてドナー由来のリンパ球にHSV-TK遺伝子を導入し、この遺伝子導入リンパ球によるDLI療法を実施して白血病を治療するもの。GVHDが発症した際には、導入されたHSV-TK遺伝子の働きにより、ガンシクロビルを投与することでドナー由来のリンパ球のみを消滅させ、GVHDの沈静化を図る。
 
 本治験の目的は、遺伝子導入リンパ球によるDLI療法の安全性、遺伝子導入リンパ球の血中動態及び重度GVHD発症時のガンシクロビル投与によるGVHD沈静化能を検討することにあり、被験者数は9例を予定。これにより、わが国遺伝子治療の足場を築くとしている。
 
【用語の解説】
■ TBI-0301を用いたHSV-TK遺伝子治療
 TBI-0301は単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を発現させるレトロウイルスベクター。ガンシクロビルは、通常の細胞に対しては弱い毒性しか示さないが、HSV-TK遺伝子を発現する細胞内ではリン酸化され、強い細胞毒性を有する最終産物に変化する。したがって、ガンシクロビルによってHSV-TK遺伝子を発現する細胞のみを死滅させることが可能で、このことから、HSV-TK遺伝子は自殺遺伝子とも呼ばれている。

■ HSV-TK遺伝子治療とは
 同種造血幹細胞移植のドナーから採取したリンパ球に、TBI-0301を用いてHSV-TK遺伝子を体外で導入。このリンパ球を同種造血幹細胞移植後に再発した患者へのドナーリンパ球輸注(DLI)療法に使用するというもの。HSV-TK遺伝子の導入により、重度の移植片対宿主病(GVHD)が生じた場合はガンシクロビルを投与してドナー由来のリンパ球のみを死滅させ、GVHDを沈静化させることができる。将来的には移植するリンパ球数を増加させ治療効果を高めることも期待できる。
 
■ ドナーリンパ球輸注(DLI)療法
 ドナーリンパ球には、白血病細胞を免疫学的に攻撃し、死滅させる能力(GVL効果)があることが、臨床データから明らかとされている。微少残存病変の根絶を図る目的も含めて、この特徴を治療法として応用したのがドナーリンパ球輸注療法で、現在、同種造血幹細胞移植後の慢性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群の再発に対する有効な治療法として確立されている。