2008年10月16日
タカラバイオ、RNA分解酵素を導入したエイズ遺伝子治療法の効果確認
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:タカラバイオ


 タカラバイオは、大腸菌由来のRNA分解酵素(MazF)の遺伝子を導入したCD4陽性T細胞を用いたエイズ遺伝子治療法の開発を進めてきたが、このほど、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科・難治ウイルス病態制御研究センターの岡本実佳講師、馬場昌範教授と共同で行った「多剤耐性HIV臨床分離株に対するRNA分解酵素遺伝子導入細胞のウイルス増殖抵抗性」に関する研究で効果が確認されたため、10月17日にBio Japan 2008(パシフィコ横浜)で発表する。
 
 現在のエイズ治療は、3剤以上の抗エイズウイルス(HIV)薬を投与する多剤併用療法(HAART)が広く行われているが、現在の抗HIV療法はHIV増殖を抑制するだけで、体内からウイルスを排除することはできない。
 
 そのため、抗HIV薬を長期使用する必要があり、薬剤による副作用の問題が発生する。またHIVは変異しやすいため、最大の問題である薬剤耐性ウイルスの出現が起こる。そこで同社は、全てのHIVタンパク質発現の基盤となるHIVのメッセンジャーRNAを、RNA分解酵素によって破壊し、HIVの増殖を根元から断つという方法をとった。
 
 エイズウイルス(HIV)がヒトCD4陽性T細胞に感染してゲノムの中に組み込まれても、感染後約24時間はウイルスが産生されないと考えられており、まずHIVのさまざまなタンパク質が産生され始める初期にTatタンパク質が少し生産され、HIVのLTRとよばれるプロモーター部分の特定のRNA配列TARと反応する。
 
 その結果HIVの複製が一挙に開始されるようになる。同社はこのTatタンパク質に着目し、HIVと全く同様の仕掛けを作った。HIVのLTR配列の支配下にRNA分解酵素(MazF)遺伝子をつなぎ、細胞がHIVに感染した途端Tatタンパク質がTAR 配列と反応しRNA分解酵素(MazF)が発現されるというレトロウイルスベクターを開発した。
 
 このレトロウイルスベクターで遺伝子導入したヒトリンパ球にHIVが感染すると、Tatタンパク質依存的にRNA分解酵素(MazF)が発現されるため、HIVが複製するためのメッセンジャーRNAが分解され、HIVの複製が阻止されることを細胞実験で確認した。

ニュースリリース参照
http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1224137739.pdf