2008年11月04日
三井化学・藤吉社長「太陽電池など機能材料事業の拡充に注力」
【カテゴリー】:経営(人事/決算)
【関連企業・団体】:三井化学
藤吉建二社長

 三井化学の藤吉建二社長は4日記者会見し、同社の08年度上期の業績が増収・減益となった背景と下期の業績見通しならびに当面の経営課題等を明らかにした。
 
 この中で同社長は、売上げ規模が最も大きい基礎化学品事業の今後について「石油化学製品全体の需要と国際市況の本格的な回復は2010年以降になると覚悟する必要がある」との見方を示した。その上で「それだけに今後は中期経営戦略(08中計戦略)のスピードアップが重要。将来性が見込める太陽電池関連事業や機能性コポリマー事業などの拡充に一層力を入れていきたい」と、機能材料事業のもう一段の充実強化を経営の最重要テーマに掲げていく考えを強調した。

 一方、設備投資については「すでに上期に福利厚生関連施設の先送りなどで約300億円を圧縮済みだが、これからも投資テーマを厳選していく」と語り、かねて計画していた中国でのPTAプラント建設についても「中国内の供給過剰状態がまだ続く見通しなので、計画を中止することにした。近く申請を取り下げる」と明言した。
 
【藤吉社長の発言要旨】
 ○08年度第2四半期(08年度上期)の営業利益は100億円で、これまでの最小規模となった。最大の要因は、急騰した原燃料価格を十分に製品価格に転嫁できなかった点にある。基礎化学品部門、特にポリマー部門におけるいわゆる決済の“期ズレ”による収益の圧迫が大きなマイナス要因となった。また、世界全体の景気の後退から石油化学製品の需要が6月以降に内外でともに縮小してきたことも影響した。
 
 ○下期の事業環境は一段と厳しくなる見通しだ。北米における自動車生産台数の大幅な減少(7〜9月期で前年比20%減)によるPPコンパウンドの需要の後退や、同じく米国の住宅着工件数の縮小に伴う中国のTDIの生産の大幅な減少と市況の下落、アジア市場おけるフェノール、ビスフェノールA、PTA等の需要の減少と市況の悪化などで、基礎化学部門は上期以上に厳しい局面に立たされよう。多くの誘導品とエチレンはすでに大幅な減産を実施している。上期のエチレンプラントの稼働率は85%、PTAは80%どころだったが、これからはさらに厳しい生産調整が必要となろう。
 
 ○08年度の営業利益は450億円となる見通しだ。7月に立てた予想を特に変えていない。前期を41.7下回ることになる。ポリマー部門の期ズレによる減益要因はなくなって逆に公益条件は好転するが、内外の景気の後退による販売数量の縮小が大きく足を引っ張ることになりそうだ。

 ○基礎化学品の需要の本格的な回復は2010年以降になると見ている。このため、(1)投資の厳選(2)08中計戦略のスピードアップ(3)適正な在庫管理とコストダウンの徹底、の3点に特に力を入れる。
 
 ○このうち08中計戦略のスピードアップでは、機能材料事業の拡充を最重要テーマに掲げていきたい。一つは太陽電池関連事業の拡大だ。(1)8月1日に設置した「ソーラー&セル部材開発室」による新たな事業戦略の構築と新製品開発の加速化(2)太陽電池封止シートの生産能力の年産9,000トンから20,000トンへの増強によるグローバルリーダーの地位の強化(3)トクヤマとのモノシランガス製造プロセスの共同開発、の3つの課題を着実にクリアしていきたい。それにより太陽電池関連の年間売上高を現在の約80億円から2011年には200億円を目指す。

 もう一つのテーマは機能性コポリマー事業の拡充である。現在もエチレンプロピレンターポリマー「三井EPT」、環状オレフィンコポリマー「アペル」、α-オレフィンコポリマー「タフマー」などの機能材料が順調に伸びており、うち「三井EPT」と「アペル」については今年の4月から5月にかけて設備を増強したばかりだがその後も稼働率は順調に上がっている。「タフマー」の場合も来年12月完工を目標にシンガポールの工場を増強中だ。これらの製品に加え、機能材料全体の集中的な育成強化によって強靭な企業体質の早期確立を図っていきたい。