2001年05月10日
日本ABS樹脂工業会、2003年までの中期需要予測まとむ
2001年内需は40万トン台を確保、輸出は4.4%減
【カテゴリー】:実績/統計
【関連企業・団体】:日本ABS樹脂工業会

 日本ABS樹脂工業会は10日、2001~2003年におけるABS樹脂の中期需要予測を発表した。これによると2001年は会員会社が1社脱退したため内需は40万700トンと実質増加ながら前年を下回る見通しで、輸出も米国経済の減速からアジアの需要が減少することから4.4%減の17万6,100トンとなり、これらを合わせた国産品の合計は57万6,800トンと3%減少する見通しとなっている。また2003年にかけては平均0.2%の減少を予測している。
 2000年の実績は、国内と輸出をあわせたABS樹脂の総出荷量が前年比0.4%増の59万4,600トンで、このうち国内出荷は2.3%増の41万300トンと2年連続で40万トン台を確保した。一方輸出は、18万4,300トンと前年を3.6%下回った。
 これに対し2001年および2003年までの予測は、前提となる日本経済の見通しについては、緩やかな雇用、所得環境の改善と企業の増益基調の継続を背景に、個人消費や設備投資などの民需を中心とした経済成長を続ける姿が定着しつつあるが、一方でIT関連の落ち込みなどもあり、自立的回復基調をたどりつつあるものの力は未だ弱く、GDP伸び率は約0.6%の成長、対米ドル為替レートは1ドル=115円としている。また、世界経済については、米国経済が株式市場の調整局面入りや所得・雇用環境の軟化にともなう個人消費の伸びの鈍化などから減速局面に入ると予想、欧州は失業率の改善など雇用環境の好転を背景に堅調な個人消費や輸出に支えられ好調を維持すると見ている。さらにアジアについては好調な輸出に支えられ、2000年並みの経済成長を達成する見通しだが、半導体などを中心とする輸出に支えられたアジア経済の回復は海外経済の情勢に左右されやすく、米国経済の減速が懸念材料であるとしている。
 これらを踏まえた2001年の予測は、国内需要が2.3%減の40万700トン、輸出が4.4%減の17万6,100トンとなり、合計出荷は57万6,800トンと3%減少する見通し。
 内需を用途別に見ると、車輌用途は自動車の生産台数が米国経済減速にともなう輸出の減少や内需における公共投資減少、新規格軽自動車の需要減退が予想される反面、企業業績の緩やかな回復、また新商品投入やモデルチェンジによる買い替え需要が期待され、前年比2%増を見込んでいるが、自動車分野、特に四輪車向けを得意としていた鐘淵化学工業が会員会社から脱退したため、9%減の5万9,300トンを予測している。このうち四輪車は、内装分野では素材代替の進展により原単位の減少が見込まれる反面、生産台数の増加や外装原単位の向上により、落ち込みを補うと見られるが上記鐘淵化学の脱退により10%減少する見込み。一方、二輪車は国内、輸出とも販売台数の減少が予測されるため、5%の減少が見込まれる。
 電気器具用途は、4月からスタートした家電リサイクル法の影響から3月までに冷蔵庫やエアコンで一時的な数量増があるものの、通年では小型機を中心とした海外生産移転の増加などから前年割れ、また音響機器も海外生産比率の増加、ビデオ機器ではこれに加えDVDへの切り替えなどから前年割れとなる見込み。一方、テレビについては、デジタル化進展などにより今後ABS樹脂の使用量の増加が期待される。この結果、同分野全体では2.4%減、2003年までは平均1%の減少を予測している。
 一般機器用途については、米国経済の減速やIT関連需要の落ち込みで少なくとも上期中はOA機器の販売が低迷すると予想される。一方、複写機やプリンターは今年も海外生産や一部他樹脂への転換が進むことにより、前年を下回る見込みとなっている。この結果、2001年は8.8%の減少、2003年までは平均5.8%の減少を予測している。
 近年好調が続いている建材住宅部品は、個人消費の緩やかな回復、さらに住宅ローン減税の延長が決まったことから、今年の住宅着工件数も堅調が見込まれている。また、他樹脂からABS樹脂への切り替えにより一戸当たりの使用量が増えることもあり、2001年は10.2%増、2003年まで平均9.3%の増加が予測されている。
 雑貨その他は、玩具・教育分野では新型ゲーム機の投入が計画されているものの、海外生産の増加もあって、前年並みを見込んでいる。またレジャー・スポーツ分野では、パチンコが生産台数は減少傾向ながら、枠材を木材などからABS樹脂に切り替える動きがあり、1台当たりの使用量が自動車並みの4~5キログラムに増えつつあること、またパチスロの静かなブームもあって、今後需要増が期待できる。これらの結果、2001年は1%増、2003年までは平均2.8%の成長を見込んでいる。
 これに対し輸出は、米国経済減速の影響を受けコンピューター関連製品や家電製品など中国を中心としたアジア地域の生産が大幅に減少すると見られ、円安傾向にあるものの日本からの輸出は減少すると見ており、2001年は4.4%の減少を予測している。また中期的には、中国国内の需要は増加するものの、今後国内生産の拡大も予想され、同地域向けの汎用品輸出の増加は期待できない、としている。このため2003年までは平均1.5%の減少を予測している。

http://www.c-nt.co.jp/cgi-bin/passFile.cgi?FILE=data/miti/2001abs>ABS樹脂の中期需要予測(2001~2003年)
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