2009年05月18日
「龍山三井」がAAM事業を順調に拡大
増強後の設備の稼働率も85%の高水準に
【カテゴリー】:経営(海外、原料/樹脂/化成品)
【関連企業・団体】:三井化学

 三井化学と韓国の龍山化学の折半出資会社である韓国の「龍山三井化学」によるアクリルアマイド(AAM)の生産・販売数量が昨年末をボトムに順調に回復してきた。
 
 同社の牛嶋毅・代表理事副社長によると、AAMの最大の消費先である高分子凝集剤(特に排水処理剤向け)の需要が1月から急速に回復してきたことが効いて同社の生産委託先である龍山化学麗水工場の最近の稼働率は85%に達しているという。
 麗山工場では、昨年末にAAMの生産設備を年産3,000トン規模手直しして年18,000トン能力に拡大した。世界同期不況の発生によって韓国内のAAM需要も大幅に縮小してきた中での増強工事の完工となったわけで、このため周囲には先行きを懸念する向きも現われていたが、排水処理剤向けを中心とした需要全体が一般の予想以上に早いタイミングで立ち直ってきたため比較的早い時期での高稼動率への移行を実現できているもの。
 
 龍山三井化学は、かねてからAAMの生産と販売の両面で韓国最大のシェアを維持している。これには、世界最大の高分子凝集剤メーカーである仏・SNFの傘下企業の一つで韓国国内と中国その他のアジア各国の両方の市場に多数の有力排水処理企業や公共事業体をユーザーとして確保しているニ洋化学から安定供給性と品質確保の両面で高い信頼と評価を受けていることが大きくものをいっている模様。

 同副社長によると、龍山三井化学が販売しているAAM全体のほぼ70%が排水処置剤を中心とした高分子凝集剤向けで占められ、残り30%が紙力増強剤向けとなっている。うち成長率が最も高いのは排水処理剤向けの需要で、同社が事業をスタートさせた2000年以降昨年までの9年間で同社の年間販売量は2倍に達したという。ただし、昨年11月から12月にかけては米国発の世界同時不況の影響でさしもの排水処理剤も需要が大きく後退して先行きが警戒された。ところが、今年に入ってからはウオン安もプラスに作用して中国やインド向けを中心にした廃水処理剤の輸出の拡大と国内の下水処理向け需要の回復で急速に立ち直ってきている。
 
 4月と5月の販売数量は昨年の4〜5月と同じレベルに戻っているとのこと。今後は再び高成長軌道をたどっていくと同副社長は予想している。それに伴い、麗水工場の稼働率は今年末か来年はじめには100%に達すると判断しているとも述べる。したがって、これまでのような手直し増強にとどまらず、もう1系列の追加増設についても遠からず検討する必要が出てくることになりそう。