2001年04月25日
三井化学、ダイオキシン類の分解触媒を開発
低温でも優れた活性、0.01ng以下への分解も可能
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:三井化学

 三井化学は、家庭ごみ等の焼却炉で発生するダイオキシン類を極めて効率よく分解する新触媒の開発に成功し、「ME触媒」の仮称で市場開拓を開始するとともに企業化準備に乗り出した。
 同社が今回開発したのは、各種のごみの焼却時に発生する排ガス中のダイオキシン類を分解し、水と二酸化炭素など変えて無害化する機能を持つバナジウム系触媒。
 通常、自治体などがごみを焼却処理する際は、800度C以上で燃焼した排ガスを一気に200度Cに急冷することによってダイオキシン類の発生を極力抑制する方法を取る。ただし、排ガスの冷却過程でどうしても若干量のダイオキシン類が再合成されるのでそれを除去する後工程が必要であり、このため、多くの自治体がバグフィルターへの活性炭吹き込み手法や、活性炭吸着塔による除去、さらには触媒による分解除去法など様々な方法によってダイオキシン類の排出を最小限度に抑える努力を重ねているところだ。
 こうした中で今回三井化学が開発した触媒は、排ガスを触媒に通すだけでダイオキシン類を簡単に分解・無害化できるというもので、実証試験の結果、ダイオキシン類の分解・除去能力の高さの面でも経済性の面でも、従来の活性炭法や既存の触媒法を明らかに凌ぐ点を確認できたとしている。
 具体的な特徴としては(1)急冷の際に排ガスの温度が仮に200度Cを下回る事態となっても十分な分解活性を発揮するので再加熱する必要がないこと(2)分解性能が極めて高く、このため0.01ngTEQ/立方メートルの極低濃度までダイオキシン類を除去できること(3)低温での酸性硫安生成・析出が少なく、また、SOXによる硫酸塩化や塩化水素ガスによる塩酸塩化に対する耐性が高いので寿命が長い(連続使用で2~3年)こと--等が挙げられるという。
 焼却施設から排出するダイオキシン類の濃度については、2002年12月から国の規制がさらに強化されることになっている。毎時4トン以上の処理能力を持つ新設備の場合は0.1ngTEQ/立方メートル以下に規制され、既存炉の基準も現在の80ngTEQ/立方メートルが1ngTEQ/立方メートルに改められる。このため多くの自治体が施設の改良・改善に必死で取り組みつつあり、そうした中での今回の三井化学の新触媒の開発はタイムリーと言えよう。
 同社では国の内外に特許を出願しており、近く各国で相次ぎ審査が開始される見通しという。多くのエンジニアリング会社から引き合いが寄せられており、すでに納入が決まったものが数件あるようだ。同社が目標としている同触媒の上市時期は2002年4月。日本国内にとどまらず、韓国や台湾などにも市場を確保していきたいとしている。