2009年06月22日
東レ、世界最高レベル断熱性能を長期間保持できる「発泡シート」開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東レ
革新断熱発泡シート

 東レは22日、世界最高レベルの断熱性能を長期間保持できる「革新断熱発泡シート」の開発試作に成功したと発表した。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)委託事業である「革新的ノンフロン系断熱材技術開発プロジェクト」の委託研究として行った「新規断熱性向上シートの研究開発」の成果に基づくとしている。

 断熱材の性能規格「F種」に相当する熱伝導度(0.021W/mK 以下)を達成したほか、この性能を長期にわたり維持できる。また、主成分に植物由来のポリ乳酸プラスチックを適用し、製造時の炭酸ガス(CO2)発生量を従来の発泡系断熱材の半分以下に低減した。地球温暖化係数も炭化水素より低い炭酸ガスで発泡させるなど、環境にやさしい先端材料の創出を実現した。
 
 今後は建築、輸送、家電、自動車など、省エネ・エコ化が進む産業分野へ用途展開する方針。2012年までに量産技術の確立と実用化を目指す。

 従来のノンフロン系断熱材は、石油系プラスチック発泡体の空隙部分に、熱伝導度の低い炭化水素を充填させて製品化してきた。今回開発したのは、新開発の「マイクロ/ナノ発泡技術」と、独自の「炭酸ガスバリア技術」を融合させ、植物由来プラスチックを用いて従来品と同等以上の断熱性、耐久性および環境性能を実現した。
 
■新発泡シートの技術のポイント
(1)マイクロ/ナノ発泡技術 : 植物由来プラスチックは、一般的に炭酸ガスで発泡しにくいが、独自の「ナノアロイ」技術と連続溶融押出発泡技術の融合により、炭酸ガスを用いて世界最高の空隙率98%という発泡体の創出に成功した。

 炭酸ガス溶解度が異なる複数のポリ乳酸系ポリマーからなる「ナノアロイ」プラスチックを開発し、マイクロオーダーとナノオーダーの発泡構造を精密に形成することで、気泡セル膜間の放射熱伝導、断熱材の固体部分の熱伝導、および気泡セル内におけるガスの熱伝導を極小化した。これにより、植物由来プラスチック/炭酸ガス系の組み合わせで初めて、断熱材として最高レベルの断熱性能を得た。

(2)炭酸ガスバリア技術 : 同社独自のフィルム製膜技術と蒸着技術を深化させて確立した。ポリエステルの持つバルクパッキング構造と表面構造制御を追求し、ガスバリア性を従来のアルミ蒸着PETフィルムに対して100倍向上させることに成功した。このフィルムを、マイクロ/ナノ発泡体と組み合わせることで炭酸ガスの拡散を抑制し、数十年の長期にわたり良好な断熱性能を維持できる耐久性を実現した。


ニュースリリース参照
http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1245641172.pdf