2009年06月23日
日立化成、金属並みの高熱伝導性と柔軟性を併せ持つ「放熱シート」開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:日立化成工業
開発された「放熱シート」

 日立化成工業は23日、さまざまな電子機器から生じる熱を効率よく冷却モジュール(注1)に伝える新しい材料として、黒鉛フィラを垂直方向に配向させた「黒鉛・樹脂高熱伝導シート」と、窒化ホウ素(BN)粒子を垂直方向に配向(注2)させた絶縁系の「BN・樹脂高熱伝導シート」の2製品を開発したと発表した。今後サンプルワークを行い、2012年には20億円の売上げを目指す。

 パソコンなどの電子機器から出る熱を効率よく冷却モジュールに伝え、放熱を促すことのできる材料はこれまでも広く求められてきたが、熱伝導性の高い材料には硬質のものが多く、加工の際などの扱いが難しい。一方、柔軟な材料は密着性はよくても熱伝導性が低いという欠点があり、高熱伝導性と柔軟性を併せ持つ放熱材料の開発が求められていた。

 同社は独自の黒鉛粉体加工技術、樹脂合成技術を生かし、形状最適化を図った黒鉛粒子を、新開発した耐熱・柔軟性をもった樹脂中で垂直方向に配向させることにより、ハイブリッド構造の黒鉛シートを開発することに成功した。

 黒鉛シートは、熱伝導率が金属並みと優れた高熱伝導率と低熱抵抗値を実現、シート自体も微粘着性をもち密着性、柔軟性に優れ、難燃性も有している。

 また、黒鉛の代わりに窒化ホウ素を用いることにより、絶縁系で垂直配向性を持つ、BNシートを開発した。絶縁系部材として高い熱伝導率を実現した。

 用途としては、高熱伝導シートは、パソコンのCPU、グラフィックチップ、チップセット、ゲーム機のメインチップやデジタルビデオカメラ等の放熱部で使用が期待できる。絶縁系のBNシートは、回路周辺の電気絶縁性が要求される部品の放熱部での使用が見込まれる。

<用語の解説>
■注1 冷却モジュール :電子部品から発生する熱を効率よく逃がすための仕組みで、電子機器上部に設置する銅やアルミニウムなどの金属製ヒートシンク等がある。

■注2  配向とは :粒子の並び方がランダムでなく、一方向に揃って並ぶこと。フィルム内の粒子が垂直方向に配向するとその方向に熱が伝わりやすい。

ニュースリリース参照
http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1245734837.pdf