2009年07月15日
「中国の景気後退止まる 懸念はバブル」呉・日総研理事が講演
「期待したい民主化 外需依存型から国内消費型成長へ転換を」と強調
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  日本総合研究所理事で上海の日綜投資コンサルテング董事長・主席研究員を務める呉軍華女史が、13日、東京・六本木の政策大学院大学(GRIPS)で「中国展望・経済の現状と民主化の可能性」と題する講演を行った。

 昨年秋の金融危機から世界に先駆けて、景気回復の兆しをみせている中国。その一方で環境問題、所得格差、汚職などの問題を抱えている。現中国の実態を分析、経済、政治の両面から展望した。以下はその要旨。

 中国の景気後退は止まった。4、5月でマクロの上昇があった。6月は自動車の生産が100万台(対前年同月比40%増)を超え、世界のトップとなった。だれが景気を引っ張っているのか。これは投資と外需である。

 中国政府は景気刺激策として昨年11月に4兆元の出資を行い、金融も緩和した。1ー3月に1兆元、4、5月は0.9兆元、6月に1.5兆元と新規融資を増やしている。合計7.4兆元に及ぶ。新中国の過去60年で最も多い。これにより流動性が発生した。

 政府としてはGDP8%の伸びを達成するためこのような措置を講じているわけだが、実態経済では消費が伴っていない。投資の中心は不動産。30ー40%を政府融資が支えている。地方政府筋、投機筋が主役だ。株式は昨年11月の2倍にも上昇している。

 投資が景気回復をけん引、金融緩和が投資の拡大を支えている。その一方で不動産販売価格の上昇、株価の上昇が表面化しているのだから、まさにバブルの危機が迫っているといえよう。この結果、景気の二番底が見えてくる。市場、需要が伴わない投資は07年にも経験している。

 政府(官)主導の投資は“鉄、公、鶏(机)”に集中するのは歴史的にみても明らかである。鉄は鉄道、公は道路、机は空港などの都市インフラである。超大型景気対策が実施されたのは、1988年、98年、2008年と10年置き。いずれもインフレになっている。

 中国の課題は投資と消費(市場)のバランスがとれていないことだ。世界の工場といわれるようになったが、主な市場は米国。このところ内需の拡大に力を入れてはいるが、まだ時間がかかる。

 消費拡大を進めているが、農民をはじめ国民は教育費や老後の心配で貯蓄に余念がない。国内で生産した製品を国内で消化するといって、家電製品や小型自動車に補助金を付けている。しかし、実態は政府が思うように進んでいない。

 これまでのところ、経済危機のたびに経常収支や固定資産の形成率など政府の資金が増えている。社会主義市場経済を志向しているというが、“官有経済”、“官有市場主義”ではないか。GDPは過去12年で 8.5倍となった。ところが財政は14倍にも増えている。

 強調したいのは投資・外需依存から消費主導型成長への切り替え、疾走型経済から安定走行型経済への乗り換えである。12年から22年にかけての本格的民主化に期待したい。