2009年07月21日
日立化成、電圧で濃淡の調整可能な「調光フィルム」量産開始
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:日立化成工業

 日立化成工業は21日、電圧で濃淡の調整が可能な広幅・長尺の「調光フィルム」の製品化に成功し、五所宮事業所(茨城県)で量産を開始したと発表した。年産能力は40万平方メートル。米国から導入したSPD(注1)技術と、独自の開発技術により製法を確立した。2012年には50億円の売上を目指す。

 調光ガラスは、プライバシーの保護や室内の日差し遮断、温度調整などに効果があるため、このところ市場の拡大が続いている。調光技術には液晶やエレクトロクロミックなどがあるが、液晶には白濁・透明間のコントロール、エレクトロクロミックには応答速度や大型化等に課題があった。

このため大型化への対応や無段階で光のコントロールが可能な、日差しの眩しさを遮る色調の製品が求められていた。
 
 日立化成は、独自の樹脂合成技術により、新たなマトリックス樹脂を開発するとともに、フィルム塗工技術、ナノ技術による調光粒子のサイズ制御技術、電気特性の評価技術などを使い、電圧で濃淡の調整が可能な広幅・長尺の調光フィルムの製品化に成功し、このほど量産化に入った。

 フィルムは、透明導電層をコーティングした、2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)の間に配向粒子を封入したマイクロカプセルが分散されたマトリックス樹脂を挟みこんだ構造となっている。調光の原理は、配向粒子に交流電圧を印加することで粒子が配向し透明状態に、無印加時は粒子が配向しないことから濃紺色の遮光状態となる。

 色調は濃紺色から透明まで濃淡のコントロールを無段階に行うことができ、光の透過率を調整することが可能。また、広幅・長尺のため大型製品にも対応でき、消費電力も1.1W/平方メートルと低消費電力を実現した。

 航空機、自動車、船舶、家電製品、パーテイションなど、幅広い分野での需要が見込まれている。


■用語解説と使用方法

(注1)SPD技術 :Suspended Particle Deviceの略。
(注2)使用方法 :通常はフィルム状で購入、使用する。調光ガラス、調光プラスチック板を製造する際は、RFI(Research Frontiers Inc.)社(米国)との間に「調光フィルム使用ライセンス契約」の締結が必要となる。


ニュースリリース参照
http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1248146778.pdf


「調光フィルム」の施行例