2009年07月28日
昭電、有機EL素子で世界トップクラスの光取り出し効率 40%を達成
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:昭和電工
塗布りん光型高分子有機EL素子を使用した照明モデル

 昭和電工は28日、有機EL素子で世界トップクラスとなる、約40%の光の取り出し効率(注1)を達成したと発表した。従来の素子基板の構造の中に光の反射を調整する誘電体層を導入した新構造を採用した。

 この結果、同社が開発中の塗布りん光型高分子有機EL素子の発光効率(注2)は、現時点では世界最高水準の1ワット当り30ルーメンに向上した。

 同社が開発中の素子は、「塗布高分子型」のため、本来発光パネルの大面積化が容易。また、発光方法が蛍光型ではなく「りん光型」であるため発光効率(注2)を高める余地が大きいなどの特徴を持つ。このため有機EL照明用途として期待が大きい。

 同社は、早期事業化を図るため、米国の非営利研究機関SRIインターナショナル(本部:カリフォルニア州)及び伊藤忠プラスチックス(本社:東京都渋谷区)の両社と協力し研究・市場開発を進めてきたが、2010年には照明市場向けにサンプル販売を開始する。

 また、2015年までには発光効率150ルーメン・白色の輝度半減寿命5万時間を達成し、蛍光灯の性能をしのぐ照明用塗布りん光型高分子有機EL素子の事業化を目指す。


<有機EL素子について>
■有機EL素子の製造方法
 有機EL素子は、その製造方法により、蒸着型素子と塗布型素子に区分される。蒸着型素子は一般に低分子材料を真空蒸着させた多層構造となっており、生産技術もほぼ確立されて量産化で先行しているが、発光パネルの大面積化には適さず、コストも含めて課題が多い。一方、塗布型素子は、高分子材料等による塗布成膜が可能であり、その工程に真空状態を必要とせず、かつ少数の層から構成されることから、将来的な発光パネルの大面積化や大幅な生産性向上によるコストダウンに大きな期待が寄せられている。

■有機EL素子の発光方法
 有機EL素子は、発光材料の発光方法により、蛍光型素子とりん光型素子に区分することができる。蛍光型素子は、現状、りん光型素子より長寿命であるため、実用化で先行し、すでに携帯電話等のディスプレーに使用されている。一方、りん光型素子は、理論上蛍光型素子の4倍の発光効率(注2)が得られることから、今後、照明等の分野での実用化が大きく期待されている。

■新開発した有機EL素子の特徴
 新構造の塗布りん光型高分子有機EL素子は、造の陰極・発光層・陽極・ガラス基板の構造の中に、光の反射を調整する層(誘電体層)を導入したもので、これにより、素子の中に閉じ込められる光を減少させ、光の取り出し効率(注1)を向上させて発光効率(注2)の引き上げに成功した。誘電体層は放熱性に優れることから、発光層の熱劣化を防ぎ素子の長寿命化にも寄与する。

<用語の解説>
(注1)光の取り出し効率:素子内部で発する光をどれくらい素子の外へ出すことができるかを示した割合。%で表示される。
(注2)発光効率:lm/W(1ワット当たりルーメン)で表示される。発光材料の性質の改良や光の取り出し効率の改善により発光効率を向上させることができる。

ニュースリリース参照
http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1248753465.doc