2009年10月13日
ジェトロが中台協力「台湾投資セミナー」開く
【カテゴリー】:海外
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 台湾貿易センターとジェトロは9日、東京で「台湾投資セミナー」を開いた。台湾の2015年を目指す経済発展ビジョン、核心産業プランなどが紹介される一方、中国市場の重要性が高まる中での日台協力のあり方などについて協議された。

 陳英顕・同センター東京事務所長が「距離を縮める中台関係と日台アライアンスの有用性」、小椋和平・台北市日本工商会理事長(台湾三菱商事薫事長)が「日台協業の進化のために」、頼以仁・亜州光学CEOが「亜州光学と日本企業の中国拠点展開およびグローバルビジョン」と題する講演を行った。以下はその大要。

■陳英顕氏:
 台湾の人口は現在2,290万人、国土面積3万6,188平方キロで、国内総生産4,017億ドル、一人当たり1万8,200ドル、外貨準備高3,322億ドル、輸出額2,557億ドル(うち対日175.6億ドル)、輸入額2,408億ドル(同465.2億ドル)。世界競争力は3位と4位のデータがある。日本は中国に次ぐ第2の相手国。

09年後半に景気回復の兆しがみられる。8月に電子部品(28社)が過去最高の売り上げを示し、自動車部品も前年同月比で倍増した。9月は外国企業の投資が71億ドルに及び、31%を占めた。とくにICが伸びている。

 サイインスパーク、国際見本市が活況を示している。産業クラスターが3年連続で成長している。中国進出も江蘇省進出をはじめ積極的。パソコン、工作機、医療、セキュリティなどのOEM生産が増えている。

 2015年を目指す台湾の経済発展ビジョンはグローバル・エコノミック・アイランド。国際化、ハイテク化、多元化を原動力とする。ポジショニングとしてはハイテク製品のサプライチェーンから開発・創造センターを目指し、ハイテクと製品と競争力を高める。
また、アジア太平洋地域でのグローバル企業としての運営管理、資金調達、金融サービス、物流ハブのプラットフォームを構築する。そして資金、人材、技術、運営管理などの支援を提供する企業の運営本部を置く。

 核心産業プランとして構造を付加価値化、知識化、低酸素化し、製品を多元化、ブランド化、キーテクノロジ化する。主力産業を基本金属,石油化学、半導体、グリーンエネルギー、フラットパネル、機械設備、医療介護、運輸、インテリジェント生活、流通サービスの10業種に絞る。デザイン分野にも力を入れる。

 中台経済関係では台湾に根を張り、中台を結び、世界に羽ばたくーがコンセプト。情報機器、半導体IC,食品、スポーツ、サービスの各産業を緊密化する。中国の世界の工場ソースを最大限に活用する。中国への渡航者は435万人、輸出1,001億ドル、進出企業6万9,000社に及ぶ。

 台湾政府は中国と「両岸経済協力枠組み協定」を結ぶ方向で非関税化産品リストを提出するなど、2010年春の締結を目指している。 また、中国は台湾企業による中国投資への上限を40%から60%に緩和した。台湾子会社については投資制限を廃止する。

 台湾は09年7月15日からWTOの政府調達協定(GPA)の正式な1員となった。台湾では180億ドルにのぼる国債入札が行われた。中央政府機関、公共事業・国立学校、台北市政府・高雄市政府の工事が対象。

 中台経済の緊密化により、台湾の戦術的な位置づけがますます重要になりつつある。台湾活用型の日台アライアンスによる中国進出は成功につながるだろう。GPA加盟による新たなビジネスも期待できる。

 なお、08年台湾を訪問した外国人372万人のうち、29.2%の109万人は日本人で国別第1位だ。日本を訪問した外国人835万人のうち16.7%、135万人は台湾人で国別第2位と日台交流は進んでいる。

■小椋和平氏:

 中国の政策的支援もあり、大陸における台湾の存在感と優位性が高まりつつある。中国市場の重要性がますます大きくなってくる。台湾企業との連携・アライアンスを今まで以上に強めることが事業成功への近道になるのではないか。

 日本の過去50年間における台湾投資は金額では米国、オランダ、英領カリブ海諸国に次いで4番目(155.8億ドル)だが、件数では5,592件とトップ。投資額はIT組立て工場の移転などで、急増している。

 今後10年で4倍に成長するとみられる中国内需には期待が寄せられる。台湾企業とのアライアンスが重要となる。日台は同じ工業国であってもお互いに補完しあえる強みを持っている。台湾の経営力、国際性、ビジネスセンスに対し日本の経営管理力、技術力、ブランド力などである。

 日台協業としては、台湾を市場として考え、将来の成長性を見据えて台湾の有望分野に食い込む。また、情報収集・分析力に優れている台湾企業と協業し、中国やアジアに進出するケースもある。台中間のECFA締結を支持し、日台のFTA締結を求める。省エネ・環境関連での交流促進を提言する。(小椋氏は約15年台湾在住)

■頼以仁氏:
 当社は22年前に中国進出(従業員600人)した。以来、法律、税法、土地代など変化の連続だった。中国に出たのは豊かで、土地が安く、ワーカー、人材などの給与が低かったからだ。いま、台湾の賃金は中国の3倍。土地は2倍である。

 まず、長安に出て、次に東莞に工場を増やした。1988年には外資の優遇があって香港、そして南頭(深せん)に拡大した。従業員は03年2万人、09年に2万2,000人。2015年には3万5,000人となる予定だ。中国の法律や規制が不透明だったことが有利に働いた。
15年前にトヨタ、キヤノンが生産性の向上に乗り出した。製品はレンズ、研磨剤で、そのころエンジニアの育成と管理が必要になった。今は「人材」の確保。技能認定による手当て、幹部の住宅保証、勤続安定のための積立、公平な昇進制度が求められている。
昨年の労働基準法の制定、社会保険の徴収で賃金が15%アップした。転職も多くなっている。管理幹部、開発エンジニアの増員が必要だ。物流、関税節約にはまだメリットがある。国際分業でミヤンマー、マニラにも進出した。