2001年04月09日
旭硝子の新中期経営計画、電子・ディスプレイ事業は積極的に拡大
外装建材は鹿島集約/溶融石英撤退/化学品は北九州工場撤退
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:旭硝子

 旭硝子は、9日に発表した新中期経営計画「StoG2003」において、セグメント別の施策として、成長事業の電子・ディスプレイ事業を中心に設備の増強を含めた積極的な事業拡大を進める一方、ガラスや化学事業では設備集約や事業撤退など、Shrink策に取り組む方針を示した。
 セグメント別の主な施策について、ガラス事業では窯業系外装建材のShrink策など既存事業の改善を進める一方で、新規連結対象会社の拡大やアジアでの最適生産分業体制の構築、自動車用ガラスのグローバル開発・生産・供給体制整備などを行う。昨年ガラスの主力拠点であるタイの関係会社タイ旭硝子(TAG)、バンコクフロートグラス(BFG)、タイ安全硝子(TSG)を子会社化したが、これらとの連携を強め、事業収益性を高める。分業体制強化の一環として、休止中のTAGライヨン工場のフロート第1窯を建築用以外の高機能ガラス用として転換、日本を含む東南アジア域内の需給に対応する。また、今年度中に北九州工場の窯業系外装建材の生産を中止し、一部設備を鹿島工場に移設・集約し、鹿島工場の稼働率を現在の70%から90%程度まで改善させる。
 電子・ディスプレイ事業では、市場の拡大に対応して新規開発商品を投入していく考え。CRT用ガラスは、今年半ばから需要回復を見込んでおり、今後画面の大型化やフラット化により需要が拡大することに対応するため、韓国電気硝子、タイのサイアム旭テクノグラス、中国の上海旭電子玻璃有限公司の海外3拠点で増強する。またTFT用は、ノートPCの浸透や液晶モニターの普及、液晶テレビの需要拡大などにより2003年度は2000年度に比べ需要が倍増すると見ており、現在台湾で建設中の新拠点で今年10月からTFT用硝子基板の研磨加工をスタートするほか、子会社の旭硝子ファインテクノ米沢工場のメタル膜成膜スパッタ設備を今年6月に増設する。PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)関連では、ガラス基板や主要部材のフィルター、フリットペーストで高いシェアを有していることから、市場の急速な拡大とともに事業が大きく成長するとみており、尼崎市の関西工場で11月の生産開始をめどに基板加工設備の増強を決定、また旭硝子郡山電材ではフリットペーストの増強を今年半ばに完了、能力を倍増する。
 さらにStoG2003の期間中に大きな成長を見込んでいる中小型液晶モジュールでは、関連会社のオプトプレックスが携帯機器用の販社カラー液晶システム(SuperSTN)を開発、7月から本格販売、携帯電話やモバイル機器向けの出荷を期待しているほか、OEM供給によりTFT-LCDの販売を開始する。このほか光関連事業では、すでに大きな実績のあるWDMフィルターや非球面レンズ、光ピックアップ用素子、合成石英に加え、WDMアンプ用光ファイバー、超高速ふっ素樹脂光ファイバーを次の成長の柱として育成、同事業だけで2005年度に600億円規模を予定している。ただし、石英事業では、溶融石英事業から撤退するとともに、合成石英事業強化のため郡山旭ファインと水戸旭ファインで行っている同事業を水戸旭ファインに統合、同社の社名を4月1日付で旭ファインマテリアルズに変更した。旭ファインマテリアルズは、高温ポリシリコンTFT基板や次世代以降のIC製造に用いられるArFレーザー用およびF2レーザー用フォトマスクなど、今後市場の大幅な拡大が見込まれることから、合成石英基板の増強を実施する。
 化学事業については、StoG2003においてビジネスユニット(BU)別の位置付けを明確化し、国内クロール・アルカリ事業の規模適正化、ふっ素関連事業の拡大、ウレタン事業の高機能化を推進する。まず、クロール・アルカリ事業については、2001年3月末に北九州工場における合成ソーダ灰と塩化カルシウムの生産を停止、これにともなう余剰電力の外販を開始するなどの収益改善策を実施した。しかし、同工場で生産する化学品は、重曹を除き市場の成長性・収益性に乏しく、今後事業環境の好転が望めないと判断、2002年9月までにこれらの設備を停止し、事業から撤退する。具体的には、重曹は設備を鹿島に移設(2002年3月に年産5万トンで生産開始)、炭酸カリは千葉で事業を継続するものの、セスキ、水酸化マグネシウム、臭素系製品は生産停止後、販売を中止し撤退する。また重炭酸カリおよび電解系製品のうち地域型立地製品である次亜塩素酸ソーダは、生産停止後も他社からの供給を受け継続する。また、か性ソーダや塩酸は自家消費用のため、販売への影響はないとしている。また電力外販事業は、事業自体を他社に売却することを検討する。これらにより約110名が余剰となるが、他工場への転勤で活用を図る一方、優遇退職の適用を検討する。なお、設備除却損については2003年3月末に約60億円を見込んでいる。
 ふっ素関連事業については、1999年11月に英ICIから買収した事業とのシナジー効果がふっ素樹脂やゴムの製造、販売、開発で現れ始めるほか、エレクトロニクス産業向けを中心としたガス・溶剤、撥水撥油材、塗料、フィルム、イオン交換膜などの主要製品が順調に拡大し、クロール・アルカリ事業の減収を補うと見ている。
 セラミックス事業については、競争力強化のため本体で運営している事業を2002年4月1日より分社化、関連会社の旭ファーネスシステムに統合することを決定した。この結果、関係会社の日本プライブリコ、ツーボー旭硝子電熔材料(中国山東省)との一体運営を図る。統合後の新会社は、連結で約700人、2003年売上高250億円、営業利益16億円を目指す。また統合にともなう設備所却損は約10億円となる見込み。主要製品のうち、電鋳耐火物は汎用品の生産を旭硝子・高砂工場からツーボー旭硝子電熔材料に移管、結合耐火物を海外生産移転、不定形耐火物は日本プライブリコに集約し、高砂工場の汎用品生産は海外に移転させるなどの施策を行う。