2010年01月04日 | |
米倉弘昌・日化協会長 年頭所感 | |
【カテゴリー】:行政/団体 【関連企業・団体】:住友化学、日本化学工業協会 |
|
日本化学工業協会の米倉弘昌会長(住友化学会長)は、2010年の年頭所感を以下の通り発表した。 ■米倉・日化協会長の年頭所感 平成22年の新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げたい。 世界経済は、リーマン・ショックに端を発する世界的な景気後退に対する各国の金融政策、積極的な財政出動、国際的な政策協調の後押しの効果もあり、落ち着きを取り戻しつつある。明けて2010年、経済の回復基調が本格化するのかどうか、昨年暮れに生じたドバイ信用不安などもあり、引き続き諸情勢を注視していく必要はあるが、アメリカ経済が回復傾向を示し始めたほか、中国やインドといったアジアの新興国を中心とした生活水準向上を志向する購買力を背景に、世界経済は緩やかながらも回復軌道を描いていくものと考えている。わが国においても、昨年末、政府が緊急経済対策を打ち出した。デフレや雇用不安に対する緊急策に加え、規制改革など中長期の成長を促す政策が柱の一つとなっている今回の経済対策が、今後、企業の活力を伴って、わが国の力強い成長戦略につながっていくことを、大いに期待している。 こうした中、世界の化学産業においては、欧米企業の大胆な戦略、アジア企業の急速な成長、中東地域での新しい勢力の勃興など、グローバルな競争が、一段と熾烈さを増してきている。わが国の化学産業においても、各社それぞれが独自の判断に基づき、思い切った事業再編やグローバル化、そして日本が得意とする新しい技術開発への挑戦など、将来の発展に向け、さまざまな課題に果敢に取り組んでいる。 このような情勢下、我々化学産業は将来にわたる継続的な発展を目指し、二つの世界的な課題である地球温暖化防止と化学品管理の向上に積極的に取り組んでいる。 地球温暖化問題については、昨年12月に国連の気候変動枠組み条約締結国会議(COP15)が開催され、各国の首脳が一堂に会して議論した結果、一定の方向性が出された。今後の交渉で「全ての主要国の参加による意欲的な目標の合意」と「公平かつ実効性のある国際枠組みの構築」が実現されることを期待したい。 化学産業では、日本が主導した国際化学工業協会協議会の取り組み成果の一つとして、第3者による定量分析を活用し、外部の検証も受けた透明性の高い分析結果によって、化学産業の生み出す製品がライフサイクル全体で温室効果ガスの削減に大きく貢献しており、適切な政策があれば、2030年には実に160億トンという膨大な削減への貢献が可能であることを明らかにした。既に世界最高水準のエネルギー効率を獲得しているわが国にとって、今後の対策は非産業部門での削減の成否に掛かっているだけに、このライフサイクルに着目した地球温暖化対策は各界からの注目を集めている。 化学産業は今後とも、自主行動計画の着実な推進により自らの排出量削減を図るとともに、これまで培ってきた世界最高水準の省エネルギー技術の海外への移転や、温室効果ガスを劇的に削減する上でブレークスルーとなる革新的な技術の開発など、地球環境問題の本質的な解決に取り組んでいく。 同時に、化学物質管理についても、「2020年までに、化学物質の製造と使用が人の健康と環境へもたらす悪影響を最小化する」という世界共通の目標に向けて、サプライチェーン全体を通じた化学物質管理の強化、化学産業の透明性向上、そしてその基本となるレスポンシブル・ケア活動の世界への拡大に引き続き注力していく。これまでの取り組みは国連の国際化学物質管理会議で銅賞を受賞するなど、高い評価を受けており、化学産業は課題克服に向けた信頼できるパートナーとしての地位を確保することができた。 今後も、各国の各種法規制に真摯に対応するだけでなく、市販されている化学物質の安全性情報の収集と共有、リスク評価とその結果の公開を推進する自主活動に取り組み、化学産業の更なる透明性向上に努めていく。 化学産業は人類社会の持続可能な発展に繋がる各種の取り組みを通して、社会からの期待や要望に応えていきたいと考えている。今年も当協会の活動・運営にこれまでと変わらぬご理解・ご協力を賜りたい。 |