2010年02月09日
「中国経済の今後の見通し」 ジェトロ・岡野氏の講演内容
“ビジネスのチャンスとリスク” 経済規模8年で倍増
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ジェトロの中国北アジア課岡野陽二氏は、中国経済の今後の見通しについて、このほど東京のセミナーで講演した。同氏は中国経済の現況、金融危機下の経済政策に触れた後、2010年は成長を続け、11−15年は経済運営に調整を求められる可能性があるなど要旨次のように指摘した。

■中国の経済成長
中国のGDPは09年対前年比8.7%成長、世界第2位の日本に並んだとみられている。10年には世界のシンクタンクが、同8.5−9.5%の伸びを予想。この勢いで行くと8年ほどで倍増、2027年には米国に追いつき、世界1位となるとの見方もある。

成長率ではインドの発展も見逃せないが、08年のリーマンショック以降、中国は金融危機に強かったことが認められた。また、中国、インド、タイ、ロシア、韓国、べトナムなどの市場が大きな伸びを見せた。中国の経済成長は政府の金融政策(4兆元)と金融緩和(9兆-10兆元)による投資が寄与した。消費は09年後半に食料品が値上がりした関係で、金額面でやや増えた。輸出は年後半に回復し始めた。

投資は予算があれば増やせる。消費は自動車、家電などの消費者優遇措置、エコポイントなどでさらに伸びる可能性がある。今年は中部、西部地区拡大している。対前年比15%程度伸ばせるのではないか。不動産、株式投資は政府が抑制し始めた。

10年は輸出が回復する。政府はここ2年間に引き上げた最低賃金の伸びを抑えはじめている。加工貿易での増地税の戻しを増やし、元の為替レ-トも安定させる措置をとり、輸出対策に重点を置いている。また、国内需要の開拓に力を入れる方針だ。

■IT、石油化学など10大産業に成長政策
産業政策ではLEDの照明用、液晶デスプレイ、半導体などの電子情報や自動車、石油化学など10大産業の計画に成長政策をとっている。産業の近代化、構造改善を進める考えである。人口問題では少子高齢化で2015年に労働人口が減り、2033年には総人口が減り始める。

米国とのパワーバランスの問題があるが、貿易では、製品・消費財とハイテク中間材といった市場の調整ができており、摩擦が起きる懸念は少ない。ただ、米国の台湾向け武器輸出、グーグル、ダライラマ問題、タイヤの関税問題などは無視できない。

また、中国は米国との“G2”論について「中国は途上国で現代化には時間がかかる。独立自主の外交政策を原則としている。国際社会の問題は1、2国だけで決めるものではない」として反対の立場をとっている。この問題は日本にとって重大である。

■ビジネスチャンスを「現地化」で生かせ
中国でのビジネスチャンスについては、優秀な中国人人材の確保、現地調達率の向上と現地感覚に合う製造、市場に適合した販売、現地ニーズを反映した研究開発、意思決定の移譲など「現地化」を強調。また、R&Dの現地化(パナソニック、資生堂、環境の東レ、島津製作所)をあげる。

ビジネスリスクでは政治・政策的要因として、徴税強化の動き、産業保護主義の顕在化、消費下支え政策による需要の先食いと社会保障整備の遅れを指摘、経済的要因としてバブルの懸念、外需の回復の遅れをあげる。
社会的要因で雇用情勢の悪化、社会不安、新型インフレインザの大流行、技術的要因で知的財産権の侵害、市場との引き換えによる技術の提供、排他的規格の設定と標準化、新技術による市場シェアの逆転。