2010年02月09日
中国で石炭からのMEG生産の動き高まる
【カテゴリー】:海外
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(上海発=特約)

中国でのポリエステル産業の急速な発展を受け、原料PTAとMEGの需要が増大しているが、MEGについては生産はそれほど増えておらず、依然として輸入に頼っている。
2008年の輸入量は520万トンで、自給率は30%を割っているが、2009年の輸入も580万トンで、前年より12%増大している。
2000年から2008年の間、MEGの消費は平均して毎年18.4%増えているが、供給の伸びは12.3%にとどまっている。

MEGの需要と供給の大きなギャップのため、Coal-to-MEG(石炭からのMEG生産)への関心が高まっている。

コンサルタント会社のASIACHEMによると、多くの研究機関やエンジニアリング会社がCoal-to-MEG
の開発、商業化を競っている。

中国科学院福建物質構造研究所(FJIRSM, CAS)は、長年の研究の結果、合成ガスからMEGを生産するための触媒と合成技術を開発した。
CO、NO、水素、酸素、メタノールを原料として、シュウ酸エステル酸化/カップリングでMEGを生産するもので、年産300トンと1万トンのパイロットプラントを稼動させている。

昨年12月に通遼GEM Chemicalが世界初のCoal-to-MEG試運転に成功した。
FJIRSM, CASの技術によるもので、第一段階としてMEG15万トンとシュウ酸10万トンの試運転に成功、2010年にも商業生産を開始する。

  既報 http://www.chem-t.com/cgi-bin/passFile.php?NCODE=28083

湖北省研究所(HBCRI) は昨年9月、石炭ガス化及びMEG合成に関する3つの重要な触媒を開発、研究室での実験に成功した。3つの触媒はそれぞれ、脱水素、しゅう酸ジメチル合成、しゅう酸ジメチル水添に使用される。

HBCRI と中国五環化学工程公司(China Wuhuan Engineering)、及び鶴壁宝馬集団(Hebi Baoma )は本年1月、河南省鶴壁市の宝馬集団の工場で合成ガスからのMEG生産のJVの設立の式典を行った。
年産300トンのパイロットプラントと20万トンの商業生産用プラントを建設するもので、宝馬集団の既存のメタノールプラントとユーティリティを使用する。

また、華誼集団の上海コーキングは大学や研究所と協力し、Coal-to-MEGの研究開発を実施してきたが、新しいプロセスでの年産1万トンのパイロットプラントを建設する。
このほか、天津大学など多くの研究所やエンジニアリング会社もCoal to MEG の開発を進めている。

MEG生産の新しい手法としてのCoal-to-MEG は2009年の中国の石油・石油化学分野での景気刺激策の1つに挙げられた。
MEGの市場が拡大しており、価格も高いため、Coal-to-MEGは中国の石炭化学産業の注目事業となりそうだ。

ASIACHEMの最新の報告では、中国のMEGの能力は2012年までに460万トンとなり、生産量は345万トン程度になる。
その時点での需要は1050万トンで、700万トン程度の不足となる。このため、Coal-to-MEG の必要性は続くこととなる。

しかし、中東でのエタンやナフサベースでのMEGも増えるため、Coal-to-MEGの製造コスト、建設費、プロセスの信頼性などがキイとなる。