2010年03月11日
「回復著しい中国経済と今後の政策課題」国務院幹部が東京で講演
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国務院発展研究センター(中国政府のシンクタンク)の魏加寧・マクロ経済研究部副部長が10日、東京で「回復著しい中国経済の現状と今後の持続的発展の政策課題」をテーマに講演した。
魏氏は「あくまで個人的見解」と前置きした上で、大要以下のように語った。

09年初めは減税政策に期待があったが限定的だった。しかし通貨融通政策で9兆6,000億元が拠出され、一部にはこれが通常の年より5兆元ほど過剰との意見も出るほどだった。過剰な資金によって地方政府と不動産デベロッパーに利益が出ている。

これに加えて景気振興策として4兆元が出資され、鉄道、道路、橋梁のインフラに融資資金が流入、地方財政にとってリスクが高まる現象も見られた。余剰資金として株式市場、不動産に流出し、資産バブルが懸念された。
09年のこのような経済のかじ取りは、ことし10年に最良の結果が出るか、困難をもたらすか。3月の全人代では今年の成長率を8%としたが、10.5%の見方もある。10年を「混沌」視する向きもある。09年は成長維持と構造調整で困難な年だったのであろう。

10年は安定成長、構造調整、インフレ防止が課題で、これまでにない議論が起きている。大きく分けて5つの課題がある。一つはインフレで、過剰な財政投融資の結果が問題。CPI(消費者物価指数)はいまのところ若干のプラスにとどまっている。2つ目は景気の2番底(過剰投資となる金融緩和策をやめられない)。3つ目はスタグフレーションの懸念(失業対策として8%の成長を維持する)。さらに農産物、鉱工業産物と資産価格の上昇抑制、バブルの崩壊と物価上昇の抑制である。対策は経済政策かサプライサイドのいずれを重視するかで別れている。

過剰投資の抑制で今年すでに2回の貸出準備率の引き上げがあったが、1月は2,000億元が余剰となった。サプライサイドからは税率の引き上げ、企業所得税の引き上げ、景気刺激策より構造改善策の重視、高度成長と経済成長のバランスなどが提案されている。いまにところ構造調整派の勢いが増している。
しかし政府は過剰投資を抑えるため鉄、セメント、板ガラス、カーバイド、シリコン、風力発電などの10業種を指定したが、どれに重点を置くかはまだ決めていない。

内需拡大では地域格差、都市と農村の格差解消、低所得者の所得引き上げなどを指摘するが、どのような形にするのかはまだだ。政府主導型か市場主体かの選択もある。国有企業の改革も課題で、「国進民退」ではなく、民営拡大に向かっている。

地方政府のプラットフォームだが、政府資金の借り入れに際して信用保証がずさん。土地を売って資金を稼ぐやり方は問題で、担保をどうするのか。返済責任が指摘されている。

第12次5カ年計画(2011〜15年)では、国の発展方式の転換が必要だ。これまで土地の価格が抑えられ、中央銀行に資産価格が抑えられ、資源価格も安くしてきた。社会福祉もこれからだ。輸出から国内消費への転換、第1次、2次、3次産業の共同発展、物的資源の尊重が重要である。経済成長も速度を年4〜8%にして、マクロ政策は大きなミスのないところとする考え方もある。3%論も出ている。