2010年03月29日
沈・多摩大教授が講演「中国経済の見通しと日本の戦略」
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多摩大学教授で元三井物産戦略研究所中国経済センター長の沈才琳(シン・サイヒン)氏が先週、東京・紀尾井町のグランドプリンスホテル赤坂で「中国はどこまで強くなるのか」と題する講演を行った。
沈氏は1944年江蘇省海門市生まれ、81年中国社会科学院大学院修士課程修了、同大准教授を経て東大、早大、お茶の水女子大、一橋大などの客員研究員を歴任した。08年4月から現職。「中国経済の真実」など。

沈氏はまず、中国がいかに米国発の金融危機を脱したかについて「外部危機に強い体質、奥が深い中国、大型景気策の効果」をあげ、過去の経験を説明した後、2010年の中国経済の見通しと巨大市場の行方を語った。

2010年の経済成長率は9%以上、上海総合株価指数4000ポイント以上、昨年の減税効果に次ぐ国民の豊かさ向上による自動車普及、不動産市場の拡大、資源安から資源高への可能性、5%前後の元切り上げなどを指摘した。

どこまで強くなるかについては、上海万博後の“7つの不安”(格差問題、腐敗、農民暴動、民族紛争、政権交代、米中摩擦、民市主義体制への移行)をあげたあと、2013年を政権交代、権力闘争の可能性のある年と注目を促した。

その上で経済挫折が起きても、工業化、都市化はまだまだ進み、中間層、富裕層が増え、20年まで年7%成長。20年のGDPは日本の7倍、30年には米国に並ぶ勢いで、一時的にとどまるとしている。

こうしたことで日本は世界戦略を米国から新興国中心に切り替え、中国戦略を「世界の工場」から巨大市場としてとらえるべきとした。また、80年代生まれの世代の消費動向の変化を見極める必要性を説いた。今こそ「親米睦中」の外交戦略が求められるというのである。

中国の成長著しい新車販売について、2000年の米国1,750万台、日本590万台、中国200万台から09年には各1,043万台、461万台、1,364万台に急増したことをあげた。昨年の実績では国民100人当たりの車保有台数が米国80台、日本60台に対して、中国はまだ6台と少ない。

昨年11月にIMFが09年の各国経済成長を示したが、中国は8・5%、インドが5・4%の増加だったほかは軒並みマイナス成長に終わった。消費は30・1%増、投資は16・9%の伸びがあった。09年は公共投資がけん引役を果たし、輸出、輸入は後退した。