2010年05月07日
宇部興産、廃プラ・リサイクル事業から撤退 原料不足“深刻”
【カテゴリー】:経営(行政/団体、環境/安全)
【関連企業・団体】:宇部興産

宇部興産は7日、容器包装リサイクル法に基づき、宇部地区で実施してきた廃プラスチックを化学原料として再利用する「ケミカルリサイクル事業」から撤退すると発表した。

同社は、荏原製作所(本社:東京都大田区)と共同で、廃プラスチックを水素と一酸化炭素に分解しアンモニアの原料とする、独自の加圧二段ガス化システム「EUPプロセス」を開発。このアンモニアがさらにカプロラクタムを経てナイロン樹脂の原料に利用できるというので期待された。

宇部、荏原の両社は、折半出資により「株式会社イーユーピー」を設立するとともに、容器包装リサイクル法が施行された2001年度から同法認定リサイクル手法の一つ「ガス化手法」のパイオニアとして、事業参入した。

だが、原料となる廃プラスチックの確保が意外に難しいことが事業スタート後に分かった。
容器包装リサイクル法の現行「入札制度」では、廃プラスチックをペレットなどにリサイクルする狭義のマテリアルリサイクルが優先され、ケミカルリサイクル事業者には原料の廃プラが思うように確保できないのが実態となっているというのである。

2008年度には、容器包装リサイクル協会に対して25,000トンの廃プラ調達を申し入れた(応札)が、実際に得られた(落札)のは、わずかに20トンだけだったという。このため、同社は同年6月以降設備を休止し、運転再開に期待をかけてきたが、今後も環境の好転は見込めず、収益の見通しも立たないため同事業から撤退することにした。株式会社イーユーピーは2008年3月、宇部興産が吸収合併した。 

【プラスチック処理促進協会・井田久雄専務理事の話】
「EUPプロセス」というのは、あの当時国の委託事業として開発された技術で、当協会も実証実験に協力した経緯がある。世界的にも非常にユニークで優れた技術だ。原料の廃プラスチックが手当てできないのは、マテリアルリサイクル優先という、今の容リ法(容器包装リサイクル法)の運用のしかたに問題がある。このままでは、油ガス化とかコークス炉ガス化といった新しいリサイクル技術は、みんな芽を摘み取られてしまう。国は早く手法の見直しを行ってほしい。


■EUP事業の概要
◇事業内容  有機廃棄物再商品化の受託及び再商品化製品であるガスの販売
◇設備所在地  山口県宇部市
◇直近の売上高  227百万円(2009年3月期)

ニュースリリース参照
http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file3_1273198217.pdf