2010年05月20日
米倉日化協会長会見「温暖化対策への対応に強い印象」
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:日本化学工業協会
記者会見する米倉会長

日本化学工業協会の米倉弘昌会長(住友化学会長)は20日の理事会後に、会長任期最後となる記者会見を行った。この2年間を振り返り「ナフサ価格急騰、米国でのサブプライムローン問題など厳しい環境でのスタートだった。こうした中、重点課題として地球温暖化対策への取り組み強化、化学品安全への取り組み強化、国内外での化学品産業のプレゼンス向上の3つに取り組んできた」と語った。

そのなかでも、「日化協として国際的に地球温暖化対策への取り組みは初めてのことであり、今年1月にICCAのとりまとめで苦労したことが強く印象に残っている」と強調した。

また、政府の地球温暖化防止法案が国会で成立する可能性が強まっていることについては、「この法案が、国際的に公平で、実効性があるという前提に立っていることに一応の安心感を持っている。ただ、産業界は法律はなくても、それぞれ(自分で)できる限りのことをやっている。日本には世界最高の省エネ、環境技術があり、その技術は経済の維持・発展にもつながっている。あまり押し付けないでほしい」と、政府に注文をつけた。

【米倉会長の記者会見での発言内容(要旨)】

■2年間を振り返って
会長に就任した2年前を振り返ると、原油をはじめとして原材料価格が高騰し、ナフサは8万円を超える水準に達していた。また米国のサブプライムローンンい端を発した金融市場の混乱が世界的に拡大するなど厳しい経済環境を覚悟せざるを得ない状況にあった。

一方では地球温暖化をはじめとする環境問題、エネルギーや資源、食糧の高騰や貧困問題など、世界全体が取り組み、克服すべき課題への対応を着実に前進させる必要があった。

日化協として重点的に取り組むべき課題として、私は(1)地球温暖化対策への取組み強化(2)化学品安全への取組み強化(3)国内外での化学産業のプレゼンス向上、の3つを掲げた。それぞれの課題に対しては優先順位をつけ、効率的・効果的にのぞむようにした。

■地球温暖化対策への取組み強化
まず取り組んだのは、製造プロセスを中心とした省エネ・温室効果ガス削減をめざす自主行動計画の継続・推進だった。厳しい環境にはあったが、目標達成は可能と予測している。

また、こうした中で獲得した世界最高レベルの省エネ技術を中国をはじめ発展途上国に紹介し、広く普及させようと、日中省エネ環境フォーラムなどの機会を通じて対応重ねてきた。

さらにより大きなな削減を効果的に進めるため注力したのが、製品のライフサイクル全体を通して温室効果ガスの削減効果を把握し、コストパフォーマンスを考慮するLCA(ライフサイクルアナリシス)を世界に広める取組みだった。ICCA(国際化学工業協会協議会)では私がリーダーとなり、日本が主導して検討を進め、昨年7月には報告書を発表した。

■化学品安全への取組み強化
化学品管理への第一の取組みは欧州REACHへの対応、国内では4月に施行された化学物質審査規制法(化審法)の改正だった。REACHでは、日本企業がスムーズに対応できるよう、欧州化学品庁や現地化学業界団体から情報を集め、日本企業をサポートしてきた。

化審法では日本の実態に即した化学物質管理のあり方として、法による規制と、企業の自主的取り組みの望ましい組み合わせを目指し、検討初期の段階から積極的に関係当局に意見具申してきた。産業の競争力を確保しつつ、行政及び事業者が適切に役割分担し、リスク管理をより効果的・効率的かつ迅速に推進できる内容で改正が行われたことは大きな成果だった。

一方、化学産業のSAICM(国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ)への取り組みも大きく進展した。具体的には「レスポンシブル・ケア」の充実と拡大、OECDの「HPVプログラム」に対する全面的な協力、「長期自主研究(LRI)の継続・推進など、多岐にわたる活動を推進してきた。

日本独自の活動としては「Japan チャレンジプログラム」や、化学品管理のさらなる向上を目指した「ジャパンイニシアティブ:JIPS」の準備作業に取り組んできた。

■最後に
先日発表された、経済産業省「化学ビジョン研究会」の報告書には、日化協という具体名称とともに標準化や人材育成への貢献が記されている。日化協の役割は今後ますます広がっていくと思う。藤吉新会長のもとで化学産業がますます発展し、化学産業が社会の持続的発展に大きく貢献することを期待している。