2010年06月03日
公取委が判断示す「三菱ケミカルHDの三菱レイヨン株式取得」
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:三菱レイヨン、公正取引委員会、三菱ケミカルホールディングス

公正取引委員会は2日、2009年度に独禁法に基づき審査・判断した、主な「企業結合事例」と関連データを公表した。事例としてあげたのは「三菱ケミカルホールディングスによる三菱レイヨンの株式取得」、「新日本石油と新日鉱ホールディングスの経営統合」、「パナソニックによる三洋電機の株式取得」など、大型案件ばかり8件。

このうち「三菱ケミカルHDによる三菱レイヨンの株式取得」では、当事会社間で競合する7品目のうち、PBT樹脂配合品、アクリルアミド及びUV硬化型ハードコーティング材料の3品目を「競争に及ぼす影響が大きい」と指摘。それぞれの品目について“競争に与える影響”や“競争制限のおそれ”を細かく調べた。報告要旨次の通り。

【PBT樹脂配合品】
・本社19年度における国内市場規模は約570億円。事業会社とシェアは(1)A社 :約35% (2)B社 : 約30%、(3)三菱ケミカルHD(三菱化学):約20% (4)三菱レイヨン:約5%(5)C社 :約5% 、その他:約5%となっており、当事会社合算は約25%で、順位は第3位となる。

・市場シェアが10%を超える有力な競争事業者が複数存在する。市場はわずかだが、海外メーカーも参入しており、国内製品とほぼ共通のグレード設定となっている。ユーザー側もメーカーに対しては強い価格競争力を有している。従って「一定の取引分野における競争を実質的に制限することにはならない」と判断した。

【アクリルアミド】
・本社20年の国内市場規模は約100億円。(1)三菱ケミカルHD(三菱化学):約45% (2)D社 :約35% (3)三菱レイヨン :約15% (4)E社 :0−5%で、当事会社合算は約60%となる。事業者数は4社から3社に減少する。輸入圧力は存在せず、新規参入も困難と考えられる。

・独禁法上の評価としては、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる恐れがある。
・しかし、三菱レイヨンから問題解決措置として、紙力増強剤向けのアクリルアミド販売事業を資本関係のない会社に譲渡するするとの申し出があった。譲受会社は高分子凝集剤を中心とした化学品の輸入販売会社であり、同措置が確実に履行された場合は、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

【UV硬化型ハードコーティング材料】
・同製品については、HHI(ハーフィンダール・ハーシュマン・インデックスの略=市場寡占度)から見て、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。