2010年10月26日
「中国自動車市場の最新状況」 現代文化研究所の呉氏が講演
【カテゴリー】:海外
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現代文化研究所の主任研究員で中国信息経済諮詢中心客員研究員の呉保寧氏が、25日、東京で「中国自動車市場、政策及び民族メーカーの最新動向」と題する講演を行い、中国自動車産業の現状や課題を語った。以下はその要旨。

呉氏は09年に中国の自動車市場が米国(1,042万台)を上回り、世界トップ(1,364台、うち乗用車1,033万台、商用車331万台)になったことを取り上げ、その背景には吉利汽車(民営、上場)、奇瑞汽車(国有)、BYD(民営、上場)の新生ビッグ3の急成長があったことを指摘した。

自動車メーカーの国内動向については「中国経済が沿海大都会部の高所得者層と地方の低所得者層の二層構造があるように自動車市場も二分極化。国際規格で製造する合弁メーカーと、品質よりも低価格を売り物にする地元メーカーが共存している。地域格差を考えると、こうした構造はまだ続く見込みだ」としている。

海外については「新興市場では一定のシエアを獲得しているが、先進国市場への大量輸出は次期尚早」とみる。国の政策では民族自動車産業の振興、条件付きの外資導入(技術開示など)、技術法規の国際標準への照準などに重点が置かれるとしている。

政策の規制、奨励では外資の出資比率(外資50%以下)、外資の合弁パートナー(同一外資グループで2社まで)を対象にするものやR&Dセンター設立規制、自社ブランドの奨励などがある。

また、排気量1.6リットル以下の小型車の減税措置を2010年末まで延長する一方、税率を5%から7.5%に引き上げた。農村への自動車普及策を2010年末まで延長している。

とくに注目されるのは高い技術を必要とする完成車に対し、公共交通向けの新エネ車の普及である。省エネ、新エネ車普及のため、科学技術部が公務車、公共交通限定でパイロット実験を行っている。対象は天津,海口、鄭州、アモイ、蘇州、唐山、広州など10都市。

個人向けとして今年6月から新エネ車普及に奨励を行っている。対象都市を上海、長春、深セン、杭州、合肥に限定。補助金額はPHV5万元まで、EV車6万元まで。排気量が1.6リットル以下で燃料消耗料が20%引き下げられるガソリン乗用車とディーゼル乗用車に対し1台当たり3,000元補助。

ただし、中国の新エネ車技術は世界と比べまだ遅れている。とくにモーターコントロラーと動力バッテリー用隔膜に関して国内での調達が困難。新エネ車のシエアは2020年で10-15%程度と見込まれている。

なお、呉氏は中国の主要乗用車メーカーの計画からみて、主な合弁メーカーの生産が2010年の412万3,000台、民族メーカーの397万台に対し、12年には各912万台、949万台に逆転するとしている。