2010年12月07日
【現地レポート】タイ経済の現状と日本企業の投資動向<上>
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:なし

タイ投資委員会(BOI)の日本事務局(大坂)は先月末、「タイビジネスミッション」を編成し、経済の現況と投資動向、日本企業の投資状況などを紹介した。開催中のアジア最大の金属機械工具見本市「METALEX」を視察した後、首都バンコク周辺の工業団地を訪問し、「タイ経済の現状と展望」に触れることができた。以下に、そのレポートをお伝えする。

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■自動車中心に中小企業が進出へ

BOI大坂事務局では当初25名ていどの参加団員を想定していたが、111名の大型ミッションに膨らんだ。愛知、大坂、広島、静岡、千葉、東京の新規の中小企業が多く、タイへの企業進出意欲が盛り上がりを見せた。

タイ政府は国民の日本への近親感が高く、日本企業の投資と輸入が同国のトップを占めていることもあって、積極的な投資を呼びかけている。日本からの投資は08年にリーマンショックの影響で急減したが、ことしは94年(ピーク時1986年の約70%)ごろの水準まで回復している。

タイ向けの各国の投資は09年でおよそ日本589億バーツ(1バーツは2.7円、今年は1-10月で770億バーツ)、米国256億バーツ、シンガポール147億バーツ、中国70億バーツ、マレーシア67億バーツ、その他295億バーツ。日本が約40%を占めている。日系企業の進出は約6,700社(実動約5,000社、製造業78%)。

貿易額では日本が約410億ドル(うち輸入250万ドル)、中国が340億ドル、米国が250億ドルなど。バンコク日本人商工会議所によると、会員数(1,300社)では業種別で製造業65%、雇用者別で製造業が78%(約50万人)を占めている。在タイ日本人は約4万5,800人。日本人会のメンバーは約7,700人。

同国のGDP(09年2,635億ドル、1人当たり3,921ドル)は1-10月で前年比41%も増え、年間で8%増(年初予想6.5%)になると予想されている。ホンダ、トヨタ、日産、すずきの日系自動車各社が操業を開始するためで、この結果、世界14位の自動車生産国となる見通し。

自動車の生産は08年が139.4万台(乗用車40万台,ピックアップ車97万台、トラック1.7万台)09年は99.9万台と落ちたが、10年は当初予想の140万台を大幅に上回る170万台とする見方が出ている。うち約半分は輸出。
日系メーカーの年産能力はトヨタ65万台、三菱25万台、ホンダ24万台、日産22万台、いすず22万台。GM16万台、オートアライアンス25万台、ほかに計13万9,000台の212万9,000台が合計能力。

自動車生産が増えるに従って金型の生産も活発化している。エンジンブロック、シャフト、フロントケース、オイルパン、ギァボックス、自動車安全部品などである。リサイクル事業用、金属産業用、電機制御システム、大型プラスチック射出成型機も求められている。こうした状況から中堅、中小企業のタイ進出が可能となっている。また、農業用機械、代替・省エネルギーの機械,繊維産業用機械などの工業化がすすめられている。

タイはアジア戦略として「ナレッジベース産業」を目指している。工業省のBUDDHIPONGSE PUNNKANTA副省長は「今後は投資金額の多いプロジェクトが増える。タイはシンガポールに次いでアセアンで第2位の経済国となろう。来年は2つの大きなイベント(5月サブコンタイランド、BOIフェア・グリーン)を開催する」と語る。(つづく)