2010年12月08日
【現地レポート】タイ経済の現状と日本企業の投資動向
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:なし

■工場の所得税8年免除など優遇措置

自動車生産の振興策のほかタイは電気・電子産業の育成にも力を入れている。09年に420億ドルを輸出、全輸出の28%を占めた。カラーテレビ、プラズマテレビ、エアコン、HDD、集積回路、その他白物家電、コンプレッサーなど。HDDは世界最大の生産国である。

タイは09年に320億ドルもの電気電子部品を輸入しており、その国産化を図っている。電子設計、集積回路設計、フラットパネルデスプレイ、農業用電子機器とその部品、医療用電子機器、ウエアと薄膜テクノロジー、太陽電池などである。

すでにソニー、二コン、船井電気、パナソニック、ダイキン、シャープ、東芝、三菱電機、ニデック、ローム、NOK、アルパイン、フジクラ、ミネベア、セイコーなど40社余が進出している。

エコカーへの投資奨励策も講じている。走行100キロ当たり5リットルを超えないこと、EURO4規定に準拠するかそれ以上の排出基準を満たすこと、5年目から年10万台の生産を超えることなどを条件にしている。

ホンダは12万台、すずき13万8,000万台、日産は12万台の生産を計画、三菱は10万7,000台、トヨタは10万台規模で来年から生産を開始する。

ハイテク車両は機械輸入税を免除、所得税も8年間免除(以後5年は50%)する。一般プロジェクトの機械の輸入税(通常7%)の免税期間は無制限。

タイの一般所得税は30%。BOI の恩典としてBOIが認めれば、研究開発およびトレーニング用の機械の輸入関税は免除、奨励事業に就労する専門家および技術者の導入を許可、土地の所有を認可、外国人の100%出資を認める。

タイは7つの奨励業種をきめている。金属・機械・輸送機械、電気電子、農業水産物・食品加工、化学・製紙・プラスチック、鉱業・セラミックス・鉄鋼、繊維・宝飾品・軽工業、サービス・公共事業だ。

投資にあたっての把握事項は投資奨励法(外資がタイで起業する際に直面する。ほとんどの製造業)と外国人事業法(ほとんどのサービス業)。外国人事業法では新聞などのマスメデア、農業関連、酪農、畜産、薬草業、仏像製造、土地売買事業などを第1業種として、また、国の安全保障、伝統文化、工芸、自然環境などにかかわる事業を第2業種として、外資との競争力が付いていない業種を第3業種として規制している。

企業の形態としては現地法人の設立か駐在事務所の開設(商行為は禁止)が必要で、支店は原則認められない。法律では投資奨励法(BOIの根拠法)、外国人事業法、工業団地公社法、工場法、土地法、関税法、輸出入規制など、また、環境保護規制、労働者保護法・関係法、歳入法(税法)の知識習得が求められる。

タイの企業は基本的にはトップダウン、言葉にださないと何事も前に進まない。業務の指示・命令は明確に。タイ人の良いパートナーをみつけること、タイ人は組織につくより、人につく。

問題点としては税務、法務の不透明な運用、労働コストの上昇(年約5%)、人手不足(中間管理職、優秀な技術者)、就業定着率の低さなど。政治はいまのところ混迷から安定に向かっている。タイ人には気質として、メンツや長幼の序列を重視するところがある。(つづく)