2010年12月09日
【現地レポート】タイ経済の現状と日本企業の投資動向 <下>
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:なし

■広がる工業団地、相次ぐ日本の自動車・電機・機械工業進出

タイの投資委員会(BOI)は工業省に属し、首相を委員長、工業大臣を副委員長とする組織である。投資奨励法をもとに投資額7億5,000万バーツ以上で国内市場向け案件のみ審査する。その他の案件はプロジェクト小委員会およびBOI事務局で審査する。

申請前の投資相談などのほか、タイに進出する企業への支援活動を広く行う。また、タイの工業団地(工業団地公社の管轄している団地と管轄外団地がある)は第1ゾーン(法人税3年免除)、第2ゾーン(同7年免除)、第3ゾーン(同8年免除)に分けられており、認定企業には優遇措置が与えられる。

同委員会によると2010年1〜6月の海外からの直接投資は377件(前年比33.7%増)/119,112百万バーツ(同144.7%増)と件数、金額とも大幅増となっている。このうち外資100%のプロジェクトは185件。

タイの登録人口(09年)は6,352万人、2000年と比べて164.6万人とわずかな増加にとどまっている。バンコクの570万人(実際は800万〜1,000万人)が9%を占め一極集中型。次いでナコンラチャシマの257万人、ウボンラチャタニの180万人、コンケン162万人、チェンマイの163万人など。(1都75県)

工業団地は主要なところで21カ所(計50、ほかに中小団地)を数える。今回の視察ではバンコクから片道約1時間のロジャナ(バンコク北部アユタヤ県・ゾーン2=電気電子・自動車部品、三洋電機、二コン、ホンダ、日立)、片道1時間のアマタナコン(東南部チョンブリ県・ゾーン2=自動車部品、ソニー、BS、カルソニック、トヨタ、ホンダ、日産、三菱、マツダ)、片道2時間のイースタン・シーボード(東南部ラヨン県・ゾーン2=自動車部品、フォード、GM など)、片道2時間の304(東部プラチンブリ県・ゾーン3=機械加工品、金属、プラスチック部品、標準工場貸与)、片道3時間のナワナコン・ナコンラチャシマ(東部ナコンラチャシマ県・ゾーン3=金型、金属加工)が対象となった。

タイの従業員の給与水準は高卒ワーカーで初任給月7,000バーツ、大卒事務職で12,000バーツ、大卒技術職で15,400バーツ、大卒営業職で15,000バーツ、院卒技術職で18,000バーツ。(推定:35年在職でほぼ2倍〜2.5倍となる)。
派遣社員の場合、正社員と違い1年で20%ほどが退職する。労務対策として悩ましいところ。皆勤賞や永年勤続賞で引きとめているものの、正社員への登用が効果的であるという。勤務時間は残業を入れて通常12時間。無届けのストは禁止されている。

ことしの1月から最低賃金が改定された。たとえばバンコクで1時間、3バーツアップの206バーツ、プーケットで7バーツアップの204バーツ、低いところで1バーツアップの151バーツもある。

現地で活躍している日系企業でロジャナ工業団地のサンヨーセミコン(三洋半導体、独資)を訪問した。5月〜10月の気温は平均35度Cでスコールも、11月からは朝20度C、昼30度Cで過ごしやすい。雨もほとんど降らない。当団地の日系企業は195社、パナソニック、二コン、パオニア、キヤノン、TDK、沖、ホンダなどが操業している。

工場は今年11月で操業20年になった。世界に半導体アセンブリー工場で政府からタイNO,1工場の表彰を受けたこともある。 従業員が1,795人、平均年齢28歳、社員55%、派遣45%、女性従業員が多い。

オペレーターの給与は基本給月7,000バーツ(残業,皆勤手当などで1万3,000バーツ)、派遣は4,500バーツ(同8,000バーツ)ほど。電力は豊富で1KWH当たり3バーツ。

このほかエアコン、エンジン制御機器のケイヒンオートパーツ、金型・HDDメーカーなどを訪れた。同団地は住金物産を中心に運営されており、工場用地のほか給与、人材、配電などの情報を扱っている。

タイの教育機関は国立大78校、私立大34校、私立専門学校29校がある。ほかに各種専門校404校。給与面では高学歴が優遇されている。ただし、中学卒で社会に出るケースが多く、進学をのぞまない風潮があるといわれる。(終わり)