2010年12月20日
【セミナー・講演】活況示すロシア経済と自動車・部品工業(上)
ジェトロが市場参入のポイントセミナー
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:なし

ジェトロ欧州ロシアCIS課は先に東京で「ロシア・ビジネス・セミナー」を開いた。「景気回復の自動車・部品産業の現状は、日本企業にとってチャンス。サンクトペテルブルク市を中心とする北西部が投資環境として優れている。工業団地の建設も進んでいる」と講師の梅津哲也・サンクトペテルブルク事務所長。

また、豊田綾・CIS課員は「ロシア経済は回復基調に入った。高くても売れる時代が終わり、品質を重視する消費動向がみられ、販促活動が求められている。法制度の整備は過度期にある」と語り、それぞれ先行している欧米グループへの対応が必要であると強調した。要旨は以下の通り。

■ ロシア経済の現況と今後の見通し (豊田綾氏)

ロシア経済はリーマンショックの2008年5月以降、低迷していたが10年3月から回復基調に入った。リーマンショック以前は実質賃金の上昇、インフレ高進、消費者ローン販売の拡大で消費が過熱した。

この危機後はクレジット機能のマヒ、給与切り下げ、失業率の上昇などで消費が冷え込み、アパレル市場は高級ブランド志向からデザイン性の重視・中価格帯ブランド志向に移行した。自動車・家電は中高級セグメントから、低価格セグメントに移り、割高な日本産のしょう油、米、みそは敬遠されがちだ。

こうした中で外国企業はどう対応しているか。韓国サムスン社は頻繁な商品の投入や型番を変える工夫でイノベーション企業のイメージを定着させた。仏ロレアル社は中低所得者(10ユーロ以下)の商品を投入、独メトロ社は品揃え拡充と手ごろ価格の提供を目指すPBブランドの開発を進めている。

日本製品は品質の良さは評価されているが、価格が手ごろでない。価格を重視する傾向は強いので、販売現場で製品に関する説明を行う地道な販促活動が求められる。つまり高くても売れる工夫が必要。ロシア市場では伝統的に独、仏、伊の企業が強いが、中、韓国企業も参入している。

富裕層は新興住宅街の建設(サンクトペテルブルグ)、戸建住宅建設計画などに関心をよせ、雨どいや水がしみても割れない外壁材の購入を考えている。また、白熱電球の生産、輸入、販売が11年中に禁止されるので、LED電球、照明器具の普及が注目されている。ロシアのオプトガン社がサンクトペテルブルクでLED製造工場を操業、フィリップスがショピングモール向け電球を供給、日亜化学は昨年9月、日亜ロシアを設立した。

自動車市場は販売促進に向けた政府のローン金利補助政策(09年4月)や買い替え奨励制度(スクラップインセンティブ)の導入(10年3月)で回復、ことしの販売台数は180万台(09年は約140万台、ピーク時の08年は270万台)を超える見通し。

10年1-11月の販売はロシア・ラーダが46.7万台、シボレー10.3万台、起亜9.6万台、ルノー8.5万台、フォード7.8万台、現代7.7万台、トヨタ7.0万台、日産6.9万台、大宇6・7万台、GAZ6.7万台など。(三菱4万台、スズキ2.5万台、マツダ2.1万台、ホンダ1.6万台)

日本製自動車部品やカーケア用品が伸びているが、模倣品、類似品が多く日本のイメージダウンになっている。
中国からの輸入品にシールを日本製として表示するケースが多いという。また、煩雑な認証制度(GOST-R)がロシア特有の規格としてあり、投資には入念な準備が必要になっている。

ロシアは人口1億4,190万人、面積1,709万平方キロ(日本の約45倍)。連邦管区8区:中央、北西、南、北コーカサス、沿ヴォルガ、ウラル、シベリア、極東。通貨:ルーブル(1ルーブル2.65円)。主要産物(08年)は原油生産量(世界第2位)、天然ガス(第1位)、ニッケル(1位)、粗鋼(第4位)、大麦(第1位)、小麦(第4位)など。(つづく)