2010年12月21日
【セミナー・講演】活況示すロシア経済と自動車・部品工業 (下) 
地場サプライヤー活用の可能性 ジェトロ
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:なし

■生産投資:通関、物流、工業団地、人材を中心に(梅津哲也氏)

ロシアの投資環境は製造業を中心にどこに工場を建設するのかが、まず重要である。地域の選定には複数地域での条件を比較する。地方政府のサポート、特別経済区、既存の産業集積、国外からの部品輸送ルートなど。

主要港湾と整備状況=ロジスティクス。国境近隣地域での通関は原則義務化されている。地場サプライヤーが活用できるか、品質レベルに問題はないか,既進出外国部品メーカーは活用できるか、人材をどう活用するか(労働争議は潜在的不安要因)が課題だ。

地域ごとの誘致には、立地後のサポートがあるかどうかが問題。北西のサンクトペテルブルグ市、レニングラード州、ヴォログダ州(州政府が独自に用地開発、サンクトぺテルブルグ東500キロ)、ノヴゴロド州,プスコフ州(このほか県レベルで11か所)、モスクワ周辺のモスクワ市、カルーガ州(州政府が独自に用地開発)、リペック州,ヤロスラヴリ州,ウラジーミル州、リャザン州、沿ヴォルガのニジェゴロド州、タタルスタン共和国、サマラ州、サラフト州、ウリヤノフスク州などが潜在的投資先といえる。

工場用地の現状は大部分が未整備である。一部では工場団地の開発例もある。連邦で進めている特別経済区(SEZ)には業態により4つのタイプがある。工業生産型、研究開発型、観光型、港湾型である。

港湾型では、横浜ゴムが立地したリペック(モスクワから西へ400キロ)をはじめ、その近辺のアラブガ、トリヤッチがあり、ウリヤノフスク、ウラジオストクもある。税制優遇やワンストップ機能の事務処理センターがある。

SEZでは企業利潤税が15.5%(通常20%)、資産税が0%(2.2%)、土地税が0%(1.5%)、社会保障が14%(26%、11年は34%)車両税が0 RUR(10〜150RUR)と優遇される。

工場建設の許認可では土地取得から生産開始までおよそ11項目のチェックがある。土地の権利取得、都市計画、建設許可、工場設計、保安基準検査、設備使用許可、所有権登記、生産開始など。手続きが複雑である。

投資環境として港湾とロジスティクスが重要である。ロシアではサンクトペテルブルク(コンテナ輸入貨物の60〜70%が通過)、ノヴォロジスク、ウラジオストク周辺が3大主要港。貨物到着の遅れが問題で混雑よりも通関が原因となっている。

サンクトペテルブルク周辺では代替港の整備が進み、通関ポイント、ロジスティク・ターミナルの整備も行われているが、全体にまだ少ない。地場サプライヤーの活用には、まださまざまな問題がある。下請けを嫌う習慣もある。
製造分野では潜在的に雇用確保の問題が潜んでいる。また、若手中心に優秀な人材がいるが、自主性に難がある。

一般的には受け身・指示待ちで、長いものには巻かれろ、できない理由は外に求めるといった習性がある。労働者に優しい雇用関係法制度があるためだ。(終わり)

問い合わせはジェトロ欧州ロシア課(TEL:03-3582-5189)