2011年01月01日
<年頭所感>経産省・鈴木局長「次世代産業育成など3施策推進」
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:経済産業省
鈴木正徳局長

経済産業省製造産業局の鈴木正徳局長は、新しい年2011年の年頭に当たり、「わが国の製造業を取り巻く環境は、円高や海外新興市場における競争の激化、内需の反動減等の影響など、課題が山積している」とし、以下の3つの施策に注力する方針を「所感」として述べた。
(1)次世代産業の育成・強化を推進する。
(2)事業環境を海外と同等のものにする。
(3)海外需要の獲得を実現する。


【年頭に寄せて】  経済産業省 製造産業局長・鈴木正徳

 平成23年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

 我が国製造業は、2008年の米国金融危機に端を発した世界同時不況から緩やかに回復してきたものの、円高、海外新興市場における競争の激化、内需の反動減等の影響により、引き続き現在も厳しい状況に置かれています。中長期的にも、生産開発拠点の国内外における配置・資源環境制約等、製造業をとりまく課題は山積しております。

こうした認識の下、私共、経済産業省製造産業局といたしましては、特に以下のような施策に注力してまいります。

第一に、次世代産業の育成・強化を推進します。
内外経済状況が大きく変化する中で、我が国の製造業をめぐる事業環境も大きく変化しております。天然資源に恵まれない我が国が、今後とも製造業において競争力を維持・強化していくためには、革新的な技術・イノベーションにより、世界のフロンティアを開拓し続けることが必要です。新たな市場創出のため、我が国の製造業の高いものづくり力を活かして、グリーン・イノベーション、ライフ・イノベーション分野や先端分野の産業の育成・強化を行ってまいります。次世代自動車、次世代航空機、ロボット、バイオ医薬品、衛星システム等、将来大きな需要が見込まれる次世代成長産業を中心に技術開発や環境整備等、幅広い支援を行います。

第二に、事業環境を海外と同等のものにします。
具体的には、企業の国際競争力強化、外国企業の投資促進を実現するため、税制改正や経済連携協定(EPA)、各種規制・制度の見直しなどに取り組みます。
我が国の法人実効税率は先進国やアジア諸国に比べ高い水準にあり、グローバル化や円高の進行と相まって企業の海外流出を促進し、産業の空洞化の一因になっております。経済産業省では、我が国の立地競争力、ひいては企業の国際競争力を高めるため、来年度の税制改正において、法人実行税率の引き下げを要望し、税制改正大綱に盛り込まれました。
また、我が国経済を活性化する上で、経済連携協定(EPA)の推進が極めて重要です。昨年11月に閣議決定された、「包括的経済連携に関する基本方針」を踏まえ、国内産業との共生を目指しつつ、関税などの貿易上の措置や非関税措置の見直しなど、高いレベルの経済連携を推進してまいります。

第三に、海外需要の獲得を実現します。
新興国でのインフラ整備や輸送機器に対する需要の急増、先進国での環境配慮型インフラや既存機器のリプレース需要等を中心に市場拡大が見込まれ、我が国の高い技術力や運営ノウハウといった強みをいかして海外市場を獲得していくことが重要です。こうした輸出においては、単品だけではなく、その設計や運営、維持管理も含めたシステムとして輸出することが重要であり、案件の組成段階から官民一体となって関与していくことが必要とされています。
今後、インドにおけるデリームンバイ間産業大動脈構想といった広域開発構想の枠組みを活用するなど、電力、上下水道、衛星システム、航空機、物流交通、情報通信などのインフラ整備とパッケージ化し、総合的に戦略的輸出を推進してまいります。また、昨年のベトナム原発建設計画の受注獲得は、菅総理を始め、官民各層での積極的な働きかけが功を奏しておりますが、引き続きトップ外交を推進し、官民一体となってインフラ分野の受注獲得を目指します。
また、我が国には、魅力にあふれ、世界に誇れるファッション、デザイン、食、伝統文化などが存在しています。これらは海外の消費者に評価されていますが、経済成長に十分結びついておりません。このクールジャパンと呼ばれる分野の製品・サービスの強みを最大限に活用し、地域・中小企業等の販路を海外まで拡大するとともに、若者の活躍の場を創り出していくことが重要です。こうした点を踏まえ、関係省庁と連携しつつ、ビジネスの第一線で活躍されている民間の方の意見を伺いながらクールジャパン戦略を構築し、実行してまいります。

上記3つの施策に加え、製造業の原材料・部材の供給リスクの低減にも注力してまいります。
昨年、レアアース等のハイテク製品にとって重要な原材料・部材の供給源が、一ヶ国に集中していることのリスク・ぜい弱性を痛感したところです。また、需要面では、パソコン等ハイテク製品に必要不可欠なレアアースを用いて製造される中間部品は、我が国部材産業の高度な技術によってなりたっており、我が国競争力の源泉です。そこで、レアアースを含む希少資源の確保に関する対策として、短期的のみならず、中長期的視点に立った対策が必要であると認識し、昨年10月に「レアアース総合対策」の骨子をとりまとめました。その中で、レアアース等の需要者であるユーザー企業の事業継続に資するための設備投資への支援や、技術開発への支援及びリサイクル対策を経済対策に盛り込み、補正予算として約1,000億円計上しました。経済産業省としましては、レアアース等の安定供給確保とともに高度な技術を有する我が国企業の育成を図るため、これらの事業を着実に実施してまいります。また、レアアース等に限らず、我が国の製造業が安定的に生産活動を継続し、成長を遂げる上でのリスクを官民で十分に共有し、リスクを克服するための対応策を今後も講じてまいります。

 製造産業局といたしましては、これらの施策を遂行していくことで、我が国製造業のさらなる発展を実現していきたいと考えております。

最後になりましたが、本年の皆様方の御健康と御多幸をお祈りいたしまして、私の新年のごあいさつとさせていただきます。