2011年01月01日
日化協・藤吉会長「“世界化学年”より実り多い年に」
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:三井化学、日本化学工業協会
藤吉建二会長

日本化学工業協会の藤吉建二会長(三井化学会長)は、2011年がキュリー夫人のねーベル化学賞受賞100周年を記念した“世界化学年”に当たるところから「化学業界にとって、より実りの多い年にしたい」と強調した。

また、昨年政府に訴えた「ナフサ等原料非課税措置の本則恒久化」や「法人税の実効税率引き下げ」など4項目の要望について、法人税の5%引き下げは決定したものの、地球温暖化対策税は先行きが不明確、原料ナフサ非課税問題でも毎年同じ議論を繰り返していることに不満をにじませた。温暖化問題では「化学技術が環境問題の解決に不可欠であることをもっと広く訴える必要がある」と指摘した。


【年頭所感】日本化学工業協会会長・ 藤吉建二

 平成23年の新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げます。
 今年はキュリー夫人のノーベル化学賞受賞100周年を記念した『世界化学年』です。Chemistry - Our Life, Our Future をスローガンに、全世界で、化学の貢献に対する社会の理解・認知を深め、若い世代の化学への興味を喚起する一年です。

 世界経済は、厳しい状況が続くものの、アメリカの景気対策と、インドや中国を始めとする新興国の成長が牽引され、緩やかな回復が期待されます。国内も当面は踊り場的な状況が続くものの、後半に向け1%を超える成長が見込まれています。一方、金余りによる資源の高騰、金融不安、中国のインフレ等、不安定要素も数多く存在し、国内も政治・経済ともに、大きな方向が決まる年になると思われます。

 こうした中で、化学業界が事業を継続し、雇用を維持するため、最小限必要な施策として、事業環境を海外とイコールフッティングにして貰いたいと、昨年の税制改正の際に、
(1)ナフサ等原料非課税措置の本則恒久化
(2)地球温暖化対策の国際的公平性確保
(3)法人税の実効税率引き下げ
(4)経済連携協定の積極的推進
の4点を強く要望しました。
 これらの要望に関し、関係方面の方々から多大のご支援、ご尽力を賜りましたことを、紙面を借りて厚く御礼申し上げます。
 4点の要望のうち、法人税率は5%の引き下げが決定され、経済連携に関してもTPPについて一歩進んだ方向が示されました。一方で、全体像が明確でないまま地球温暖化対策税が決定され、また原料ナフサ非課税問題が本年まで持ち越し、結果として3年続けて同じ議論が繰り返されることとなりました。特に、法人税減税の財源として、業界の存続を根本から脅かすナフサ課税論が極めて安易に議論の俎上に上がったことに強い危機感を持っています。原料への課税不安が毎年続く中では、投資や雇用を確保していくことは困難です。今年こそ、何としてでもこの問題に決着をつけたいと存じます。

 世界では、地球温暖化に関しCOP17へ向けた議論、TPPを中心としたグローバル化の議論が着々と進んでおり、我々はこれまで以上に自らの立場を明確に国内外に発信していく必要があると考えます。
 温暖化問題について、我々日本の化学業界は自らのGHG排出量削減に努め、既に世界のトップレベルであること、化学製品が地球の温暖化防止に大きく貢献していること、そして、化学技術が環境問題の解決に不可欠であること等、これ以上不公平な負担を負わされることが無いように広く訴える必要があります。

 また、日本の化学業界は、工場の操業、物流での安全確保、サプライチェーン全体を通じた化学物質管理等に主体的に取り組んでいます。したがって、グローバルな競争において、イコールフッティングが確保されれば、雇用の維持に十分な競争力を持った業界です。こうした点について、工場、地元も含め、あらゆる機会を捉え化学業界を正当に理解・認知して戴く努力が必要と考えます。

 昨年7月の国際化学オリンピックで日本代表の高校生4人が68カ国270人の参加者の中で、極めて優秀な成績を挙げました。そして、12月には鈴木先生、根岸先生がノーベル化学賞を受賞され、昨年は、高校生と大先輩が活躍されました。今年は現役世代が頑張って、日本の化学産業の将来を決めていく年です。『化学』が日本の競争力の原点であり、正に、Chemistry - Our Life, Our Future です。
本年が化学業界にとって新しい転換の時となり、実り多き年となるよう祈念申し上げるとともに、引き続き当協会の活動・運営にご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。