2011年02月17日
「新段階の日本と中国の中小企業」でフォーラム
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:なし

社会知性開発研究センター(専修大学)、都市政策研究センター、中小企業研究センターは15日、川崎で「新段階の日本と中国の中小企業、川崎・上海の連携の可能性」と題するフォーラムを開いた。

中国から左学金・上海社会科学院副院長、魏偉明・上海市楊浦区委員会副書記、沈開艶・同院科学経済研究所副所長らの4氏が参加。日本側は社会知性開発研究センターの荒木俊雄・副センター長(専大文学部教授)、伊藤和良・川崎市経済労働局産業政策部長、篠崎幸弘・信金中央金庫 地域・中小企業研究所上席審議役らが、経緯、現状と取り組みを伝えた。

左副院長は「上海中小企業の発展および関連政策問題」、魏副書記は「旧工業基地から知的イノベーション基地へ」、沈副所長は「中小企業イノベーションのおける上海万博の影響」、雷新軍・経済研究所副主任が「上海産業構造の転換と中日企業間協力の可能性」を語った。

■左副委員長は、中国の中小企業の分類が例えば工業企業の従業者数を、小型企業で300人以下、中型企業で300~2,000人以下としているが(日本は300人以下、欧州は250人以下)、この政策では中小企業政策をゆがめ、場合によっては混乱を生じさせる。
また、地方政府がGDPを追求するために大型投資・大企業の誘致を重視、民営企業を中心とする中小企業発展に力を入れなかった。中小企業の金融サービス機構の整備も遅れている。資金調達のコストが高い(年金利30%以上)。

大都市の空間と中小企業の発展にも問題がある。都市中心部におけるビジネスコストの上昇と新都市開発地域の格差がみられる。上海は郊外の新城の建設に対し、中小企業に空間を提供せねばならない。
戸籍制度と人材流動の問題もある。社会保障制度は労動力の空間移動と社会的移動の障害となっている。大都市の戸籍制度は人材移動のボトルネックとなり、特に中小企業の人材誘致の支障になっている。大都市は郊外の発展に必要な中小企業発展の拡大が求められる。
行政はイノベーション型中小企業の発展を指導し、大学・研究機構と中小企業の連携を図り、中企業の発展により多くの金融支援を行うことが重要である。社会保障制度の改革と整備を図り、中小企業発展に必要な人材を確保するーなどの見解を伝えた。

■魏副書記は川崎市と連携、協力を実施した上海市楊浦区の旧工業区から知的イノベーション基地の移行した同区の経過と今後の取り組みを説明した。同区は上海市の北東に位置し黄浦江北側15.5キロを占める。面積60平方キロ、人口130万人、復旦大、同済大など14の大学、100か所の研究所があるサイインスパーク基地。
繊維などの伝統産業から知的イノベーション基地に移行しつつある。21世紀のクリエイテブ(創意、創造)産業園区を目指している。大学キャンパス、サイインスパーク、コミュニティの3区融合、連動発展に力を入れている。

09年に国家海外イノベーション・創業人材基地として指定された。投資額100億元、面積84ヘクタール、すでにオラクル、EMCなどが入居をきめていると語る。

■雷副主任は上海のモノの生産は原料型から組立型に移り、国際都市としてのサービス機能を強化している。中心部の商業施設、オフィスビル拡張などだ。産業構造調整の方向としては、先端製造業と現代サービス業の発展である。
政府は上海の第12次5カ年計画(2011〜15年)として、経済成長率8%、第3次産業のGDP構成比約65%、イノベーションの促進、R&Dの支出額をGDPの3.3%に決めている。
このほか都市サービス機能の強化(国際金融、港運、貿易、経済各センター)都市住民生活の質とレベル、教育(地方財政支出の15%)の向上。生態環境の改善、エネルギー利用効率の改善、対外開放の一層の推進、都市の国際化水準の向上、法制度と社会管理制度の整備など。

中日間の補完的産業構造について、中国の発展空間と労働力に対し、日本の技術と経営ノウハウをあげる。中国経済の発展と構造の転換は日本企業にとって、良いチャンスになる。09年の上海登録外国人15万人のうち日本人は3万人と最も多い。

問い合わせは社会知性開発研究センター(TEL:044-911-1347)