2011年03月09日
日本化学会、第91春季年会で注目の研究発表10件
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:日本化学会

日本化学会は、26日から4日間「第91春季年会」を横浜市神奈川区の神奈川大学横浜キャンパスで開催し研究成果6091件を発表するが、その中でも注目を集めそうな研究10件を紹介する。

▽ヘテロダイン検出電子和周波発生による液体界面の溶質分子の絶対配向の決定(理化学研究所基幹研究所)=水面に浮かぶ分子の向きをレーザーで決める新しい分子計測法を開発。
▽金属錯体を触媒とする水の分解反応(分子研・九大院理・さきがけ)=水に太陽光をかざし、クリーンエネルギーの一つである水素を作り出す。〓ルテニウム単核錯体の酸素発生触媒作用〓という四半世紀にわたり信じ続けられてきた定説を覆す発見である。

▽糖テンプレート除去後もらせん構造を保持するニエチルピリジンオリゴマーの開発(富山大学大学院)=有機合成を駆使し、糖質を選択的に取り込む人工らせん型高分子「分子ナット」を開発。
▽ブタおよびイヌ血清アルブミンを不斉反応場とする2-アントラセンカルボン酸の生体高分子不斉光反応(大阪大学)=2001年にノーベル化学賞を受賞した野依良治氏の研究は、人工的な触媒を用いた熱反応による不斉合成であつたが、今回の成果はキラルな生体分子を用いた光駆動の反応である点が新しい。

▽テロメラーゼ阻害剤テロメスタチンの生合成遺伝子クラスターのクローニング(東京工業大学大学院)=抗がん剤のリードとなりうる天然物有機化合物テロメスタチンが、微生物中でどのように生合成されるのかを明らかにした。
▽糖鎖プライマー法を用いたC型肝炎ウイルスの感染機構に関与する糖鎖の解析(慶應義塾大学)=C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子の複製機構に、細胞内の糖鎖が関与していることを世界で初めて明らかにした。特定の糖鎖の発現量を高めることで、HCV遺伝子の複製を抑制することに成功した。
▽ナノ構造体上での幹細胞挙動の観察(名古屋大学)=iPS細胞などの幹細胞の分化を制御できるナノ構造体を開発し、再生医療の早期実現を目指す基礎研究に成功した。今後、高効率に目的とする細胞への分化誘導が可能となれば、再生医療で必要となる細胞の安定供給も可能になると期待される。

▽光合成アンテナ複合体の中赤外スペクトルの一分子観察(東京工業大学)=これまで不可能と言われてきた「タンパク質の立体構造の1分子観測」に世界で初めて成功した。
▽イオン液体共存下でのセルロース系バイオマスからの直接エタノール発酵(神戸大学)=イオン液体と呼ばれる新しい種類の塩でセルロースを処理することで、機能性酵母を用いて一段階でエタノールを作るプロセスを開発した。
▽集光太陽エネルギーの化学エネルギー変換(東京工業大学)=太陽熱エネルギーと水から、二段階水分解反応を用いて次世代エネルギーの水素を作り出すための基礎研究である。