2011年05月10日
中国、アセチレン法PVCの新設を制限
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:なし

既報の通り、中国の国家発展改革委員会(NDRC)は先月末、新しい「産業構造改革ガイドライン2011」(産業結構調整指導目録2011)を発表したが、「制限」される品目にアセチレン法PVC(全ての新規計画)が入っているのが注目される。
(エチレン法PVCについては30万トン未満が制限される)

「制限」品目は、今後の新設の承認を得るのが極めて難しいと思われる。

アセチレン法では、生石灰とコークスからカーバイドを製造し、カーバイドからアセチレンを製造し、アセチレンと塩酸を反応させ、VCMを製造する。
アセチレンと塩酸の反応過程で塩化水銀を触媒として使用する。

中国政府は水銀法電解は禁止したが、同じく水銀を使用するアセチレン法塩ビはこれまで禁止していない。
これは、中国が大量に輸入をせざるを得ない石油を原料とする(エチレン法)のではなく、中国に大量にある石灰石と石炭(コークス)を原料としたいためである。

中国工業情報化部(MIIT)によると、2009年末時点で中国に104のPVCメーカーがあり、能力合計は1481万トン、うち、カーバイド法メーカーは94で、能力全体の76.5%を占める。カーバイド法の生産量は580万トンで、生産量合計の63.4%を占める。

国連環境計画(UNEP)によると、2005年ベースの中国のカーバイド法VCMでの水銀使用量は700~800トンにものぼる。
(中国全体の水銀使用量は1425~1845トン、中国を除く東アジア、東南アジア全体の水銀使用量は452~608トン)

中国では水銀による事故が多発しており、工業情報化部は、UNEPの動きも踏まえ、2010年5月31日付で通達261号「カーバイド法塩ビ業界水銀汚染総合防止管理通達」を出した。
水銀による事故防止対策が目的だが、今後、水銀条約の発効により水銀の輸入が出来なくなることへの対策も含んでいる。

カーバイド法PVC業界の水銀の管理を強化し、水銀汚染を防止するもので、
・2012年までに低水銀触媒の使用を50%にし、塩化水銀の使用量を25%減らし、使用済み水銀触媒の回収をリーズナブルなレベルで行う塩酸深度脱吸技術普及率を50%以上とする
・2015年までに低水銀触媒の使用を100%にして、使用量を50%減らし、使用済み水銀触媒を100%回収する
というもので、対策等を詳細に述べている。

今回は初めて、アセチレン法PVCの新設の禁止を打ち出した。

しかし、既存のアセチレン法PVCについては禁止の対象となっていない。
小規模で環境汚染の問題を抱える設備については今後、規制が行われると思われるが、大規模設備については今後も操業を認めると思われる。

また、ダウと神華集団が計画している大規模石炭化学計画では、石炭→メタノール→オレフィンを原料とするPVC50万トンの新設を含んでいる。アセチレン法PVCが今後、石炭ベースのエチレン法PVCに代わる可能性もある。