2011年07月04日
【現地報告】タイ国の経済・投資とビジネスチャンス
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:なし

◇経済好調・海外企業の投資も活発◇

タイは3日の総選挙(下院)でタクシン元首相派の政権奪取が確実と伝えられているが、同国内の経済はこのところ順調で、2010年のGDP8%(ことしは4ー5%)の成長を見せ、自動車、電子・電機製品などの輸出がいぜん活況を示している。工業省のタイ投資委員会(BOI)大阪事務所では、このほど日系企業100余社によるビジネスミッションを結成、バンコクと周辺工業団地を視察した。
同ミッションはまず、SUBCON THAILAND(下請け製造業者専門展、アセアン地域を中心に世界14カ国から250社を超える企業が出展)を見学、次いでBOI幹部、バンコク日本商工会議所、ジェトロバンコクセンター、OSOS(ワンストップワンスタートセンター)などから最近の景況、投資状況、優遇措置などについて説明を受けた。

現地BOIの幹部(大阪事務所 TEL:06-6271-1395)は「タイは海外からの投資について奨励政策をとっている。当国はWTOメンバーで外国為替送金に制限がなく、現地での資金調達や輸出にも条件を付けていない。製造業は100%の投資ができる。ただしサービス業には一部制限がある」と語った。

また、日本からの投資は過去20年間続き、2010年では342件1,003億バーツ(1バーツは約2・7円、前年比70%増、全体の45%を占める)と増えた。次いでオランダが11.6%、シンガポールが8.6%、中国が7.8%を占める。
自動車・部品、サービス業が増えている。東日本大震災の影響についてはGDPを0.1%減少させるにとどまるとみている。原油価格や消費者物価の上昇が予想されるため金利(現在3%)の利上げなどで抑える考えだ。

ジェトロ・バンコクセンターでは、タイにおける日本の存在は大きいという。投資額、貿易額ともトップ。政情に不安はあるが力強い経済と生活環境がある。高度な産業集積(自動車、電機、電子、機械)がある。

ASEAN諸国の生産・輸出拠点で投資優遇制度がある。鉄道などインフラ整備が続く。対日関係が良好などをあげている。在タイ邦人は約4万7,000人。

◇中国・ベトナムの影響などに不安も◇

ただ、中国との一層の競争の激化、ベトナムの影響力増大、賃金上昇と生産性のバランス、税務・法務の不透明な運用、エンジニア・中間管理職の不足などが今後のリスクとみている。

タイ政府はことし1月から日給206バーツの最低賃金を215バーツに上げた。大学卒(技術系)の給与は、月1万5,400ー2万6,200バーツ。事務系は1万2,000ー2万4,300バーツ。高卒ワーカーは7,000バーツ。

タイの労働力は3,945万人(総人口6,651万人)、非農業関連が2,270万人、失業率0.9%。雇用慣行は欧米型。企業への帰属意識は希薄、条件次第で移動する。経験・年功より学歴、家柄などが尊重される。

大卒と高卒従業員の意思疎通がうまく機能しない。メンツにこだわる。予見と分析が苦手、時間に無頓着、技術の継承が難しい。仕事に対する責任感が薄いなどの問題がある。入社時に職務が固定しており、原則として職務移動がないという職業観があり、一人で何役も務めることは難しい。

バンコク日本商工会議所(会員1,328人)は、業種別会員でみると製造業が656人(49.1%)、非製造業が672人(50.6%)を数える。雇用者数では製造業52万9,720(76・3%)、非製造業16万4,819人(23・7%)で製造業が4分の3以上を占める。


◇有望な市場成長性と安定した労働力◇

タイ投資の有望な理由として現地マーケットの成長性、安価な労働力、組み立てメーカーの供給拠点、第3国輸出拠点、産業の集積、インフラの整備などをあげる。輸出拠点としては例えばトヨタの場合、09年実績で商用車19万台(8か国)、4万6,000台(100か国余)を輸出している。

日本企業のタイからの自動車・部品輸出額(エンジン、1部車体部品を除く)ではマレーシア向けが147万バーツ(14%),日本136万バーツ(13%)、インドネシア100万バーツ(10%)、南アフリカ58万バーツ(6%)、ベトナム55万バーツ(5%)、米国51万バーツ(5%)など計170か国余に及び計1,022万バーツ。

自動車の生産は2010年の165万台から、ことし180万台、2016年には300万台に達すると予想されている。これに必要な労働人口は10年の45万人から、70万人に増える見込み。

自動車メ—カーの2010年の生産台数は、トヨタ32万、いすゞ15万、ホンダ11万、日産5万、三菱4万、日野1万など計74万台(92.3%)、その他の外国勢はシボレー2万、フォード1.3万、ベンツ0.5万、ほかにBMW、ボルボ、VW、プジョー、起亜、大宇などが計6万台余を生産した。

タイではメコン川流域開発構想に参加、ラオス、カンボジア、ミヤンマー、中国、ベトナムを含む人口3億1,400万人の地域で道路などの建設を予定している。タイとしてはインド洋側の深海港の建設(モラメイン、ダウェー)にも期待している。ミヤンマーからラオスータイーダナン(ベトナム)の東西回路、バンコクからカンボジアーホーチミンの南部回路、昆明—ラオスーミヤンマーバンコクや、昆明—ベトナムー南寧の南北回路などでいずれもバンコクを通過する予定だ。