2011年07月08日
埼玉医大、がん原因遺伝子の働きなしでES細胞の多能性維持
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:科学技術振興機構

科学技術振興機構(JST)は8日、埼玉医科大学の奥田晶彦教授らの研究グループが、マウスのES細胞(胚性幹細胞)について、多能性を保つために必須と考えられてきた、がん原因遺伝子c—Myc(シーミック)の働きは、培養条件によっては必須でないことを発見したと発表した。同研究はJST課題達成型基礎研究の一環として同グループが取り組んできた。

ES細胞は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)と同様にさまざまな細胞に分化できる能力(多能性)を持っており、その多能性を維持するために働いている因子があるとされている。シーミック遺伝子の働きによって作られるシーミックたんぱく質は、細胞のがん化に深く関与するが、ES細胞やiPS細胞の多能性を維持するために必ず働かなくてはならない因子の一つと考えられていた。

しかし、奥田教授らの研究グループは、シーミックたんぱく質のパートナー因子であるMax(マックス)たんぱく質の機能を解析することで、培養条件によっては、シーミックたんぱく質の機能がなくてもES細胞の多能性が維持されることを発見した。

この発見は、iPS細胞の質、誘導効率、安全性の向上につながる可能性がある。

また、がん化に関わるシーミックの働きが不要になれば、ES細胞やiPS細胞の医療への応用で最大の問題点とされるがん化を回避する方法へと発展することも考えられる。