2001年02月19日
三菱化学、UCSBと機能材料・光関連のR&Dで提携
産学間では最大規模/学際的な新しい形の提携
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:三菱化学

 三菱化学は19日、都内で記者会見し、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)との間で、先端材料と固体照明・ディスプレー(Solid State Lighting)の2分野における包括的・学際的な研究開発提携について基本合意した、と発表した。両者はUCSB内に「三菱化学先端材料研究センター(Mitsubishi Chemical Center for Advanced Materials、略称MC-CAM)」を設置、共同で研究開発を行う。三菱化学が拠出する研究開発資金は、最終的にMC-CAMにより選択されていくことになる。また三菱化学は、資金拠出した研究成果を独占的に使用する権利を有することになる。
 今回の合意により、三菱化学は5年間で2分野あわせ1,500万米ドル(約17億円)、このうちMC-CAM関連で1億2,500万ドル(約14億円)、固体照明・ディスプレー研究センター関連で250万ドル(約3億円)の研究資金を拠出する予定。
 UCSBは、昨年には材料部門に所属しているヒーガー教授とクローマー教授がノーベル賞を受賞するなど、先端機能材料分野で世界トップの研究レベルにある。三菱化学は、UCSBの教授から提示される高度な研究テーマの中から三菱化学グループのコアビジネス戦略に合致したテーマ-を選択、MC-CAMで共同研究を行い、成果を事業化していく。現在同社では、先端的なオプトエレクトロニクス材料・デバイスの新規デザイン、有機半導体、EL(エレクトロルミネッセンス)、LED(発光ダイオード)、TFT(薄膜トランジスタ)、レーザー及び光通信用材料、バイオ材料及びバイオセンサー、ナノテクノロジー、ナノレベルの高度精密生産技術、III/V族化合物半導体などのテーマを考えている。
 MC-CAMでは、昨年三菱化学のCTOとなったステファノポーラス教授とUCSBのティレル工学部教授を中心に組織される統括会議(Geverning Board)で研究戦略と方向性を決定、UCSBのフレドリクソン教授(MC-CAMのディレクター就任予定)と、三菱化学の米国研究開発法人であるMC-RIC社(MC Reserach & Innovation Center,Inc.)の吉江建一社長(MC-CAMコ・ディレクター就任予定)が運営していく。
 さらに三菱化学は、USCB内に設置されている「固体照明・ディスプレー研究センター」に資金拠出することも決定した。この資金により三菱化学固体照明・ディスプレー教授ポストが創設され、同研究センター活動を支援する。三菱化学は、同センターにおける研究成果を他のスポンサーとともに使用する権利を取得したことになる。
 浅野応孝常務、ステファノポーラス教授のコメントは次の通り。

[浅野常務]今回の発表は非常に意義のある提携だ。昨年7月にステファノポーラス教授をCTOに迎え、これまでいかにR&Dを経営に近づけるかを検討してきたが、今回の提携はその成果の1つのステップである。今後のR&Dは、自社だけではできず、グローバルな考え方が必要だ。こうした意味で、従来の委託研究とは次元の違う提携を結ぶことができたと考えている。

[ステファノポーラス教授]今回の提携による研究では、特に有機エレクトロニクスと光技術を重視している。前者については、新しいディスプレーやチップなどを実現、ウェアラブルコンピューターなどで実用化できる可能性がある。後者については、20世紀が電子の研究が主体であったが、21世紀は光技術の研究が重要となると見ている。有機エレクトロニクスの市場は、2010年には5,000億ドル、また対象が幅広いが、光ベースの製品の市場は2010年に7,500億ドル、2020年には1兆5,000億ドルの市場に成長すると見られている。この提携は来月からスタートするが、両者間で研究者の行き来を多くしていきたい。

<参考>
http://c-nt.co.jp/news/mcc_uscb.jpg>

会見に参加した両者関係者(中村修二・材料学部教授(左から4人目)、アラン・J・ヒーガー教授(右から4人目))