2011年09月09日
京大院、高温プラスチック流体のシミュレーションに成功
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:科学技術振興機構

科学技術振興機構(JST)は9日、京都大学大学院が、計算流体力学法と高分子動力学法の組み合わせによる「高分子流体のためのマルチスケールシミュレーション法」を用いて、円筒の周りを流れる高分子溶融体の複雑な流動挙動を再現することに成功したと発表した。

金型・射出成形などの材料設計に応用が広がると期待される。

プラスチック製品の製造には、高温で高分子材料を金型に流し込む成形法がとられており、金型といった複雑な流路の中で高分子が流体としてどのように挙動を示すのかを理解することは、材料や製造プロセスの設計を行う際に重要である。

だが、(1)高分子は分子量が大きく、絡み合いもあるため、計算流体力学シミュレーションの計算負荷が大きい(2)マクロスケールとミクロスケールを組み合わせたマルチスケールシミュレーションは、高分子鎖の状態が流れに沿って同じである場合に限られるーことから、高分子材料の問題に広く適用できなかった。

京大大学院は今回、個々の流体粒子の計算負荷を軽減するモデルで絡み合い高分子鎖をシミュレーションし、マクロな計算流体力学シミュレーションに埋め込むことで流体とともに流れるシミュレーション法の開発に成功した。

具体的には、ミクロスケールでは複雑に絡み合った高分子液体が、マクロなスケールの円柱周りを流れる際の流動挙動の解析や予測、またミクロスケールで発生する高分子の絡み合い状態との関係を明らかにした。

今回の成果は、現実の高分子材料のマクロな流動物性を、高分子鎖のミクロな性質から直接予測可能な方法を世界で初めて提案・実装したものであり、2012年に完成するスパコン「京」を利用することにより、大規模なシミュレーションも可能にする画期的な成果である。