2011年11月14日
東ソー・宇田川社長「事故再発防止に全力つくす」
【カテゴリー】:経営(環境/安全)
【関連企業・団体】:東ソー
記者会見する宇田川社長(右から2人目)

東ソーの宇田川憲一社長は14日朝の記者会見で、南陽事業所の事故について「人命につながる大きな事故を起こしてしまい大変申し訳ない。周辺住民や地元関係者にもご迷惑をおかけした。今後は保安対策について、組織面・ハード面・教育面など、あらゆる面から見直しを行い、再発防止に全力をあげたい」と謝罪した。今後の塩ビ業界への影響については「やはり大きいと思う」と表情を曇らせた。

江守新八郎常務(経営企画・広報室担当)、鯉江泰行常務(機能商品・環境保安担当)、重村伸顕生産技術部長の3氏が同席。

事故は13日午後3時24分ごろ、同事業所構内の第2塩ビモノマー装置(年産能力55万トン)で発生した。2度の爆発のあと火災が起こり、翌14日朝10時現在、まだ鎮火していない。「無理な消火活動はかえって危険なため現場では状況を見守っている」状態という。

事故原因はまだ分かっていない。同工場では13日の朝、EDCプラント不具合が生じ点検中だった。EDCからVCMを生成する工程(ストラクチャー)に異常が生じ運転が自動停止した。だが、事故のあった第2VCM設備からは100メートル以上も離れており、両設備間にどのような関係があったのか、あるいは別の原因によるものかなどの詳細は現場に立ち入れないため不明だ。

東ソーは、わが国最大のVCMメーカーで、南陽に3プラントと四日市に工場を持つ。
生産能力は南陽が1号機 25万トン、2号機 55万トン、3号機 40万トンの計120万トン、四日市には25万4000トンあり、合わせて年産145万4000トンとなる。このうち現在、南陽の3プラントが操業停止中である。

塩ビ樹脂は、子会社の大洋塩ビが四日市、千葉、大阪の3工場に合計55万8000トン設備を持ち稼動中。
四日市は同工場内のVCMプラントからパイプで引き取っているが、千葉と大阪は南陽工場からタンカーで運んでいる。また、南陽地区では徳山積水(年産11万3000トン)にVCMをパイプ供給している。

東ソーは、残りの100万トン近いVCMを中国をはじめ東南アジア各国に輸出する世界有数の輸出メーカーで、独自の“ビニル・イソシアネートチェーン”事業を展開中だ。

国内では塩ビ樹脂の震災復興需要がこれから本格化する。アジア市場の需要は依然として旺盛だ。こうした矢先だけに南陽のVCM設備停止が長期化すれば、内外塩ビ市場への影響は必至といえそうだ。

なお、東ソー南陽事業所内は、同社の主力工場の一つ。VCMのほか電解設備、か性ソーダ、ポリエチレン、クロロプレンゴム、エチレンアミン、ゼオライト、ジルコニアなどの生産設備が並ぶが、現在のところ稼働設備は発電所、電解、アミン類など東側に寄った一部プラントに限られているという。