2001年02月05日
三菱化学、米社から臨床検査、ゲノム関連技術の国内独占使用権を取得
今後光ディスク技術も利用し高度化、量産化を推進
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:三菱化学

 三菱化学は5日、米国クァンテック社(Quantech Ltd.)およびHTSバイオシステムズ社(HTS Biosystems,Inc.)から、次世代表面プラズモン共鳴法(Grating-coupled SPR)に関する特許、製品技術について、日本国内における独占使用権を取得した、と発表した。また、両社が製造している製品の日本における独占販売権取得のオプション契約と研究開発用機器購入契約も締結、近く両社の製品の独占販売権を取得する方向で協議・検討を継続する。今後これらの技術による緊急検査システムやタンパクチップの商品化を進めるとともに、同社が蓄積した広範な技術を駆使して、さらなる技術の高度化を図る考え。
 クァンテック社は、次世代SPR技術をベースとして、医療機関の緊急検査室に患者が搬送された際に必要な緊急検査システム(商品名:FasTraQ)を開発、米国で年末をめどに上市するための準備を進めているが、今後三菱化学は日本国内での上市を目指し、国内で行われている緊急検査項目に対応した診断薬の開発、販売の許認可手続等を進めていく。従来のシステムでは、検出方法により別々の機器システムを用いるのが一般的だったが、SPR法を用いることで、検出方法論の壁を越え、緊急検査に必要な検査項目を全血で多項目同時に測定することが可能となる。また、SPRでの検出方法以外にも、最先端の情報技術を駆使したワイヤレス送受信機能を搭載、全く新しいタイプのシステムとなっている。一昨年の米国緊急医学会では、これら情報技術と検査技術の融合というコンセプトが高い評価を受けている。
 一方、HTSバイオシステムズ社は、クァンテック社と米国の有力ゲノム企業アプライド・バイオシステムズ社の合弁により設立された研究開発型ベンチャーで、クァンテック社が開発した次世代SPR技術を臨床検査以外の研究領域に応用するため、これをアレイ(多重センサー)化することで、高い効率と処理能力を持つタンパクチップの開発を進めている。
 SPR法は、光とセンサーチップを用いる質量分析法の一つだが、今回導入する次世代SPR技術は、プリズムを用いた従来法に比べ、センサーチップ上に光ディスクと同様の微妙な溝(グレーティング)を施すことにより、プリズムを用いずに質量分析を行うことができ、現段階でも1平方センチメートル当たり400スポットを同時に検出可能なレベルの多重化が可能となっているが、さらに多重度向上のため技術開発に取り組んでいる。また高価なプリズムを使用せず、構造を簡素化したことで、従来製品に比べ、より安価で大幅な小型化が容易、などの特徴がある。三菱化学は、ライフサイエンスだけでなく、光ディスクの研究開発、事業も行っていることから、今後光ディスク事業で培った技術が、今回の技術を用いた製品においても、世界市場を見据えた高度化や大量生産化に寄与できると見ている。