2011年12月13日
ジェトロ・セミナー「タイの復興と日系企業の現状」(下)
【カテゴリー】:行政/団体(海外)
【関連企業・団体】:ジェトロ

<早期復興に向けた現状と課題>

◇井内摂男・ジェトロ・バンコク事務所長=全国79都県のうち65都県が洪水の影響を受けた。高地(バンコクと北部のロジャナの中間)にあるとされるドンムアン空港が水没した。バンコク都心への浸水はなかった。

タイの経済情勢は洪水発生まで堅調に推移した。7~9月期はGDPが3.5%成長した。しかし広範囲にわたる洪水被害でことしは1.5%成長にダウンする見通し。それでもタイ国家経済社会開発庁は2012年で4.5~5.5%の急成長を見込んでいる。

タイの競争力の源泉は産業集積とサプライチェーンである。

日本からの累積投資額は、今年の10月末残高で中国の6億7,000万ドルに次いで、第2位の2億7,000万ドル。インドは1億7,000万ドル、インドネシア1億4,000万ドル。

一人当たりGDPは2010年でシンガポールの4万3,117ドル、ブルネイの3万1,239ドル、マレーシアの8,423ドルに次いで4番目の4,992ドルである。タイ、インド、インドネシアでは製造業のうち輸送機械器具(自動車、部品など)への投資額が大きい。それぞれ投資残高の34%、43%、43%を占めている。

また、アジア各国都市の年賃金を比較するとバンコクは5,125ドル、中国の広州5,269ドルとほぼ同じ水準である。ソウルの24,601ドル、シンガポールの22,206ドル、香港の21,878ドル,さらに台北の15,479ドルは別としても、北京の6,107ドル、上海の5,609ドルより低い。

タイの強みとしてはメコン地域の中心部に位置、ASEAN随一のすそ野産業の存在、熟練労働力を持つ、高速道路網などの優れたインフラ、政府の手厚いインセンテイブなどがあげられよう。

メコン地域の中心にあることは今後、ラオスからタイを経て、マレーシア、シンガポールに向かう幹線道路の建設や、べトナムからカンボジア、タイを経てミヤンマー、インドへの幹線道路とアジアの東西南北に通ずる幹線道路網を持つことになる。

タイ政府は洪水対応策として、BOIの対象企業に対して代替生産、代替輸入(機械および原材料)を認めた。
ビザ・就労許可に関する措置、一時休業時の給与補助(最大3カ月間、労働者一人当たり月2,000バーツ補助)、金融支援、食品輸入の措置も講じた。

ジェトロは日系の洪水被災企業アンケートを11月に実施(製造業45社、非製造業10社)したが、タイ国外への転出計画はなかった。タイ国内の他の場所での事業再開計画は10%ほどにとどまったとしている。

洪水の2011年にタイ経済に与える影響はGDPで2.3%(1,119億バーツ)減。
影響額の名目は2,487億バーツ。このうち最も影響の大きい製造業は1,587億バーツとなっている。