2012年03月13日
化学会、第3回化学遺産に「鈴木梅太郎ビタミンB1発見」など7件認定
【カテゴリー】:行政/団体
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日本化学会は13日、化学遺産認定第3回として、1910年の鈴木梅太郎ビタミンB発見、日本合成染料工業発祥のベン
ゼン精製装置、日本初期の塩ビ樹脂成形加工品、日本のビニロン工業発祥など7件を認定した。

これは、歴史資料の中でも特に貴重なものを認定することにより文化遺産、産業遺産として次世代に伝えるのが狙いで、2010年3月の第1回から今回まで17件にのぼった。

第3回認定の7件の化学遺産の概要は次の通り。
▽眞島利行ウルシオール研究=眞島利行(1874-1962年)は、漆の主成分であるウルシオールの構造決定を皮切りに、日本特産の天然有機化合物の構造研究を中心とした研究を推進し日本の有機化学を世界的なレベルに高めた。

▽田丸節郎資=田丸節郎(1879-1944年)は、1908年にドイツのフリッツ・ハーバー研究室に留学し、アンモニア合成の研究に参画した。田丸はドイツでの経験を活かして理化学研究所第1号館(化学)の設計や学術振興会の創設などに貢献した。

▽鈴木梅太郎とビタミンB1の発見=鈴木梅太郎(1874-1943年)は当時不治の病と恐れられた脚気の原因を研究し、1910年に微量でも生命活動の維持に必要な物質を発見し「オリザニン」と命名した(現在のビタミンB1)。これは、実質的に世界で初めてビタミンの概念を提唱し、ビタミンを発見したことになる。

▽日本の合成染料工業発祥に関するベンゼン精製装置=第一次世界大戦の勃発によりドイツから合成染料の輸入が途絶えたため、1914年に三井鉱山でのアリザリンレッドの工業化を皮切りに日本の合成染料工業が始まった。現在は由良精工(現在の本州化学工業)和歌山工場に合成染料の出発原料であるベンゼンの精製装置が保存されているのみである。

▽日本初期の塩化ビニル樹脂成形加工品=東亞合成化学は1951年、イギリスのウインザー社の押出機を改良して塩化ビニル管の試作に成功し、水道管などに広く使われた。その化学遺産は当時の製品見本としてアロン化成に保管されている。一方、軟質塩化ビニルの電線被覆は1949年に古河電気工業がアメリカの押出機を用いて国産化を実現した。

▽日本のビニロン繊維の発祥=1939年10月、ビニロンの基礎研究が京都大学桜田一郎教授らによって発表され、国産初の合成繊維として期待された。倉敷絹織(現在のクラレ)、鐘淵紡績(現在のKBセーレン)など民間企業で研究されたが第二次世界大戦の進行で阻まれた。1950年、倉敷レイヨンにより初めて工業化された。

▽日本のセメント産業の発症=1875年隅田川東岸で、日本で初めてセメントを製造した官営工場が払い下げられ、後の日本セメント誕生となった。一方、最初の民営セメント製造会社(後の小野田セメント)が1881年山口県小野田に誕生した。