2012年03月26日
中国 賃金上昇急ピッチ・年20% 上海、北京などに広がる
【カテゴリー】:海外
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中央政府の指導もあって中国の賃金上昇が急ピッチになっている。政府は昨年、第12次5カ年計画で最低賃金を年率15%アップする方針を打ち出したが、これだと5カ年で2倍以上の水準になる。実態は 年20~30%上昇の勢いがみられるという。

上海は4月1日から最低賃金を月1,500元に引き上げるが、北京は2,000元を予定しているともいわれる。中国では沿岸地区の都市から賃上げ要求が強まっている。都市の物価や物流コストの上昇、社会保障費(医療、住宅など)の上乗せもあり、生活コストが高くなっている。

これを解消するため従業員の賃上げ要求が強まっているわけで、政府も特別な措置を考えていない。
賃上げ要求に対応する手段としては、各企業が組合と独自に交渉するしかない。
中国の組合は,工会と呼ばれている。政府の指導のもとで存在しているため、ストなどの行為に仲裁などの指導は行われていない。

結局、企業側には組合と話し合いで問題を解決することが求められている。政府と従業員との一致した賃上げの実行には抵抗する手段がない情勢だ。とくに中小企業にとっては当面、難しい状況に直面する。

10年ほど前に広東省の珠江デルタに電子部品の工場を建設した日系中小企業(従業員170人)の苦悩状況を入手したので参考までに以下のように取り上げることにした。

当社の立地するエリアの最低賃金は月1,100元。求人の必要性から現在1,250元に引き上げた。近隣のあるメーカーでは1,300元に引き上げたとの情報もあり、当社も引き上げざるをいないだろう。
住宅積立は給与の20%(個人、会社各10%)。法律的には全従業員が対象。外国人就業者の社会保険加入(養老、医療、失業,労災、育児出産)法令が2011年10月15日にだされた。1人当たり月最大5,000元と予想されているが、まだ実施されていない。

中国はいま、富裕層と貧困層の格差拡大を問題視しているが、中央政府が法令の内容変更や実施時期に手間取っているため、各省、市、鎮の対応にさまざまな差異がみられる。今のところ法律情報の収集に懸命だ。

一方、物価や物流費の高騰にたいし、ユーザー側の値下げ要求が高まっている。当社としては管理面を含めて日本の生産システムを導入してコストダウンを進めたいところだが、現地では中国式(ISOを含む)の管理規定に拘束されている。

当社は日本から約80%の材料を輸入している。市場からの値下げ要求にこたえるためには中国材料を活用して行く必要がある。このためには現地の状況に即応できる経営態勢が求められる。現時点では給与水準の決定、管理規定を含めて中国スタッフに頼らざるを得ないわけで、独自の管理規定の整備が求められているといえる。