2012年03月26日
理研、ヘビー級ケトン「ゲルマノン」の合成・単離に初めて成功
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は26日、安定な有機化合物であるケトンの炭素原子をゲルマニウム(Ge)に置換したヘビー級ケトン「ゲルマノン」の合成・単離に初めて成功し、ケトンにはない反応性を見いだしたと発表した。

これは、新しい化学反応・触媒反応の開拓と、新たな機能性物質デザインなど幅広い分野に貢献できると期待される。

ケトンは、化学工業や生態系で中心的な役割を果たす有機化合物で、炭素原子と酸素原子との間に安定した二重結合を形成している。ケトンの炭素をGeに置換したヘビー級ケトン「シラノン」「ゲルマノン」は、化学結合の仕組みを探る基礎科学の面だけでなく、実用化の面でも多くの知見を与えると期待されている。しかし、ケイ素やGeの不飽和結合が不安定かつ他分子と反応しやすいため、これまでに合成・単離した例はなかった。

今回、「イーインド」と名付けた立体的に大きな(かさ高い)保護基を独自に開発し、Geと酸素との二重結合を覆った結果、ゲルマノンを合成・単離することに初めて成功した。

Geと酸素の二重結合は、炭素と酸素の二重結合より電荷が分離しており、Geがプラス、酸素原子がマイナスの性質が強いこと、その結果、通常ケトンとは反応しない二酸化炭素がゲルマノンとは室温1気圧で速やかに反応して、環状化合物を生成することを発見した。

これまで合成することができなかったヘビー級ケトン「ゲルマノン」を手に入れたことで、今後はケイ素原子でできた「シラノン」の合成研究も加速すると予想される。ゲルマノンやシラノンを詳細に調べることで、化学結合の仕組みを探る分子の結合論、反応論に関する基礎的な知見が得られ、新しい化学反応・触媒反応の開拓や機能性物質の設計などに活用されると考えられている。